【ヒロアカ】轟君と私は自覚症状無しの天然同士らしいです。 (ページ25)

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気づかないうちにページ25

切島side

ーーーわかってる。分かってはいるんだ。けど…！

隣を歩く湖神の影を落とした顔を見て、どうしようも無い苛立ちに支配される。

全力でやってる湖神に対して酷いことを言うなよとか、人の気持ち考えたことあるのかとか、心の中に浮かぶのは轟を非難する言葉の数々。

湖神はかっこいい。個性が使えないことがなんの足枷にもなっていないとでもいうように、あれだけの強さを見せつけた。

身体能力、状況判断能力。

個性が使えないからこその、素の強さ。

ーーー最高に眩しくてかっこいい。

なのに。

轟が言ったことがそのままの意味じゃないことぐらいわかる。

ーーーだったら尚更、なんであんな言い方したんだよ！

轟と戦って、間近にいたからこそ気付いた。

あいつは、湖神には個性を使おうとしなかった。

本人は気付いていないんだろう。

恐らく無意識のうちに、湖神を避けるように氷を出していた。

湖神はたとえ自身に攻撃が向けられていようがいなかろうが対処出来たはずだ。

そんなことは試合の様子を見れば誰だってわかることだ。
現に八百万は躊躇なく手榴弾を投げてきた。

なぜ個性を使わなかったかは分からない。

無意識に個性をセーブしてしまう理由がきっとあるのだろう。

だからこそ轟の言葉が本心そのものだとは思っていない。
けどそれは、湖神には伝わっていなかった。

｢ほんと、ごめんね切島くん。私…｣

少し震えた湖神の声にハッとした。

無理して笑っているのがわかる。
これ以上コイツに責任を感じさせる訳にはいかない。

｢気にすんなって！次ペアになった時もよろしくな！｣

精一杯の笑顔で答えた。

僅かに表情を明るくさせた湖神が嬉しそうに

｢ありがとう、鋭児郎くん！またよろしくお願いします！｣

花が咲いたように笑ったのを見て、あぁそういうこと、と何故か納得してしまった。

苛立ちの原因。

どうしようも無いことなのにムカついて仕方ないのは。

眩しいくらい真っ直ぐなお前を傷つけた轟が、許せなかったんだ。