君を堕とせるなら。【usss】

Interlude−9 ページ28

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『……勝っ、た……？』

『うん。君の勝ちやよ』

せんらさんがにっこり笑ってくれる。

ついさっき開示(Show down)があって、全員の手札が開かれた。

私が誰に言われるでもなく自分の勝利に気付けたのは、ゲーム中、うらしまさかたせんの4人がルールを私でも分かるように教えてくれたから。

この人たちは多分本当に(・・・)、優しい。

『くそ……っ、稼げるチャンスだったのに！』

『この大学生(ガキ)どもさえ邪魔しなければ……』

『あ？子供(ガキ)から金巻き上げようとしたてめえらのがよっぽど子供(ガキ)でクズだろ。てめえらには敗北がお似合いだ。失せろ』

『っ……チッ、帰るぞ！』

おじさん達が続々と席を立って、逃げていった。

閉まるドアを見ながらうらたぬきさんが呟く。

『捨て台詞の一つも吐けねえのかよ。おもんねーな』

『――あ、あのっ！』

4人がこちらを見たのを確かめ、私は精一杯気持ちを込めて頭を下げた。

『助けてくださって、ありがとうございました！』

『……おう。いいってことよ』

『ええんやでー、ってうらたさんとかぶってもうた』

『勝ててよかったな！』

『よう頑張ったね。お疲れ、おめでとう』

「うらしまさかたせん」の名前の通りの順に、4人が温かい言葉を返してくれる。

私は頭を上げて、4人へ向けて思いっきり笑った。

『ありがとうございます！』

すると、4人が――それぞれ差はあるものの――一斉に戸惑った表情を浮かべた。

『……可愛いよな』

『うん。可愛い』

『めっちゃ可愛(かわ)ええな』

『これは将来美人になりますね』

『？』

うらしまさかたせんでひそひそ話(ばなし)してる。なんだろ。

『そういえば、しまさんフロップで嘘ついてましたよね？ゲームでも人に嘘ついちゃだめなんじゃ……』

ルールが解ったことで分かったけど、私はフロップではまだそんなにいい役ができてなかった。でも、しまさんは「役がいい感じ」と言っていた。

首を傾げると、しまさんがニヤリと笑った。

『ポーカーはええんよ。トクベツ。ポーカーでの嘘――“ポーカーフェイク”は許される』

『……そうなんですね』

『あっ、分かってへんな？まあええよ、ポーカーやってけばそのうち分かる』

それにもやっぱり、私は曖昧な返事をした。



浦島坂田船の皆さんに救われた、遠い一夜の記憶。

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