3rdラウンド−志麻 2 ページ20
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最後までやって負かしたいからな。
そうじゃなくても今回はブラインドが6枚。チップの残り枚数的にも、レイズをする余裕はなかった。
そして、いよいよ「その時」がやってきた。
「宜しいでしょうか。それでは、
――「俺が勝つ時」や。
俺は少女より先に、自らの手札を開示した。
【スペードのK】【スペードのJ】。
共通カードと合わせると、《ストレートフラッシュ》ができる手札だった。
「凄いのができましたね……!」
「運良くな。うっかり顔に出そうやったわ」
興奮気味のディーラー――もちろん演技や。俺とグルやからな――と軽く話した後、少女を見やる。
彼女はまだ手札を持っていた。
「どうしたん?はよ開示せんと……」
言い終わらないうちに、少女が手札をテーブルに伏せて置いた。
「私の負けです。ありがとうございました」
「……は?」
「あ、お客様!?」
ディーラーの慌てた声が飛ぶが、少女は構わずテーブルを離れ、去っていく。
俺はチップをとりあえず回収して、少女を追いかけ、腕を掴んで止めた。
「待てや。なんで逃げるん?」
「……志麻さん、イカサマしたでしょう」
ぎく、と体が正直に反応した。
俺の体のアホ!!
シメてやりたいが何せ自分の体、苦しむのは自分だ。もどかしく思っていると、少女が俺を見据えて言った。
「このカジノでは、イカサマは何より重い重罪なんです。出禁では済まされません。最悪の場合……生きられなくなります」
それは、言葉を選びに選んだ末の言葉、という感じの声だった。
“生きられなくなる”――抽象的ゆえに悪い想像を掻き立てられ、ぞっと背筋を怖気が走る。
「私の手札の中には、あなたの手札と同じものが1枚ありました。開示すれば必ずイカサマが発覚していたんです」
「…………」
「……もう、やらないでくださいね」
少女が微笑み、いつからか緩んでいた俺の手の中から腕を抜いて、出入口の扉から外へ出ていった。
……イカサマが分かるから、手札を開示せんかった?
俺を守るために、負けたっちゅうんか?
そんなこと君がやる義理はないのに……。たかだか1回ポーカーして、2回の夜を
意味わからんわ……。
「……あー、くそ」
俺は額に手をやって前髪を握り潰し、ぽつりと零した。
「――俺の、負けや」
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ノア(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!!これからも頑張ります!^^* (2020年8月11日 14時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
のん - とっても面白かったです!こんな素敵な作品を読ませていただきありがとうございます!「ポーカーフェイク」の歌詞と物語の内容がぴったりと合っていて、すごいと思います!これからも作品作り、頑張ってください!(長文失礼しました) (2020年6月10日 22時) (レス) id: d1f95d9fc5 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - ひよりさん» コメントありがとうございます!初めてなんて光栄です……!曲をテーマにした小説で歌詞の使われ方に違和感ないと言っていただけるの一番嬉しいのでそれも本当に嬉しいです(;///;) ありがとうございます、是非他作品もこれからもよろしくお願いします! (2020年3月18日 22時) (レス) id: 97e24364b3 (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 占ツクで初めて感想書いてます!曲の歌詞が違和感なく使われていて、思わず「すごっ!かっこいい!」と1人で騒いでました。笑 占ツクで感想書きたくなるくらい良い作品に出会ったのは初めてです!その文才が羨ましい...。ほかの作品も読んできます!応援してます! (2020年3月14日 3時) (レス) id: d25668dc8d (このIDを非表示/違反報告)
ミルクショコラ - 私もよく本を読んで一人で笑ってしまいます。読んでなくても思い出し笑いをしてしまいます。。。笑 なので、極力マスクをするようにしてました笑 話、楽しみにしています! (2020年3月5日 13時) (レス) id: a2c6795623 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノア | 作成日時:2019年5月1日 0時