. ページ20
．
「パパは、なんで亡くなっちゃったの、」
『……事故。
ボール追いかけて、道路に飛び出しちゃった女の子がいてね。ちょうどあの頃のAと同じくらいだったからほっとけなかったのよ。
手術室入るまでは意識あったんだけどね、…出血が多すぎたって』
そんな話、私知らない。
こんなの、聞いたら忘れられるわけがないもん。
混乱する私を見てママが続けた言葉に、耳を疑った。
『……あのね。
本当は現場に、Aもいたのよ、。』
「、え？」
『パパのこと覚えてないのはね、目の前で見ちゃったからよ。
まだ2歳だったんだもの。…かなり大きいショックで、パパに関する記憶はほとんど消えちゃって
それ以来なに見せても話しても、次の日には“ぱぱ“っていう存在がとりあえずいるってことくらいしか分からなくなっちゃったの。」
「そん、な…」
私が、自分で拒否していたの、、？
ママはきっと何度も、私にパパの話をしてくれていたのに。
ぱぱのことを記憶から消し去ってしまっていたのは、
全部 私じゃない…っ、
『本当にね、わく、……パパは、Aのことたくさん愛してたんだから
パパったらね、喋らなくていいって言ってるのに手術室に運ばれるまでずーっと喋るのよ。酸素マスクつけられたまま。』
「…？なに、を」
『Aのこと、頼む。って
傍にいてやれなくてごめん。でもずっと、ふたりのこと愛してるから、…って。
最後までかっこいい人だったのよ、あなたのパパ。』
「、…っ、ママっ、わたし、っ、」
何も覚えていないことが、こんなにも悔しいなんて。
今まで私、知らなかった。
欠片でいい。ほんの少しでいいの。
そう思って何度頭を叩いていても、やっぱりぱぱに関する記憶は微塵も出てこない｡
『いいのよ、仕方ないの。
思い出せなくても今のAがパパを忘れずに想ってればそれで充分だから。ね？』
久しぶりに抱きしめられた腕の中
きっと私が、この世に生まれてきた瞬間と同じくらい
思いきり、泣いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スイ.(プロフ) - リリーさん» こちらこそ読んでくださり、そしてコメントまでしていただきありがとうございます☺️そう言っていただけてとっても嬉しいです…！これからも楽しみをお届けできますように🌟 (8月18日 20時) (
レス) id: e6a739559e (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 本気で涙が溢れ出した作品でした。素敵な作品をありがとうございます😭 (8月16日 20時) (レス) @page27 id: 96d2fca65a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スイ. | 作成日時：2023年8月12日 23時
