星の雨

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紫side


命の誕生とは、なんと神秘的なものなんやろう。


この世の奇跡。


望美ちゃんによう似た、可愛いらしい男の子や。


助産師さんも淳子さんも帰られて、
やっと二人きり、

いや、今からは三人や。


「崇裕さんにそっくり。ふふ」


赤ん坊を抱いて微笑む望美ちゃんは、
神々しいまでの美しさを放ってる。


「何を言うとる。
望美ちゃんにそっくりや」


頬にそっと触れると、
あんなに激しい泣いてた赤子が泣き止んだ。


「いいえ。崇裕さんに瓜二つです」


「望美ちゃんに似た方が男前になるやろに」


「そんなことありません。
この子は崇裕さんに似た、強い日本男子になるのです」


望美ちゃんがそう言うならそれでええか。


「軍人にだけはならせたないなあ」


思わず、溢れた本音。


慌てて。


「名前は何にしような」


満州でも、

男の子の場合と女の子の場合、
どちらでも良いように、色々と考えを巡らせておった。


「崇裕さんが付けて下さいね」


「責任重大やな、
気に入らんかったら言うてくれよ。
３つ程、考えてはきたんやけど」


望美ちゃんが、
俺の名前から一文字取りたいと切に言うもんやから。


「崇晴、泰崇、崇永。
どれがええかな。
字画はどれも完璧やから。
望美ちゃんの好きなのにして欲しい」


「どれも素敵で決めきれません。
どうしましょう」


親からの最初の贈り物やから、
真剣に悩むのも当然や。


大切なこの瞬間を分かち合えることが、
この上なく幸せやな。


ほんまは、戦地に赴く自分が、
子供を持つなどと、
憂慮せんかったと言えば、嘘になる。


「もし赤ちゃんが来てくれたら、
崇裕さんがいない間も、
私、どうにか耐えられます。
ひとりぼっちにせんといて。
崇裕さんの子を産みたいの。
お願い。
私の一番の幸せなの」


望美ちゃんが強う望むから。

いや、俺かって。


どうしても子供が欲しかった。


本能的なものやと思う。


望美ちゃんに出会うまでは、
そんなこと、考えたこともなかったのに・・・


俺が不在の間のことは、
照史と淳子さん、流星、

それに、望美ちゃんの兄上様に、
重々頼んできた。

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