男性恐怖症の私が株式会社Ｓに入り、また、一から……やり直します…。

第263話 翔太の過去…私、何も…知らない。 ページ38

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私は、お母様に呼ばれたとのことで、下に案内された。

姉｢ここの奥にキッチンがあるの。そこにお母さんがいると思うから、行ってくれる？｣

貴｢はい！｣

そう言うと、お姉さんは走って二階に行った。
私は言われた通り、キッチンに向かった。

貴｢…あの…。｣

母｢あ、来てくれた♪｣

貴｢話…って…。｣

母｢うん…。ちょっと夕食、手伝ってくれない？｣

貴｢？…はぁ…｣

私は切って欲しいと言われた野菜を切ることにした。

母｢…翔太はね、小さい頃からお姉ちゃんっこでね…。ずっとお姉ちゃんと一緒だったの。一緒に遊んだり、一緒にアニメ見たり…。今もそうだけど…。あの子、女の子っぽく育ってるでしょ？｣

貴｢…はい。｣

母｢…声は、どうしてあんなに高いのかわからない…。今は、あの声のおかげで声優としてのここまで上がって来れたけど…あの子も小学生の時、すごく悩んでいたの。｣

貴｢…。｣

母｢学校で、いじめを受けてね…。いつの間にか、学校に行かないのが当たり前になっていたの。ずっと、部屋に閉じこもってね…ゲームしたり、アニメ見たり…。そんな翔太を、私はどうやって学校に行かせればいいのかわからなかった。いつも…死にたいって…ここにいたくないって…自分の体に、傷をつけようとしていたわ…。でも、それを私たちは止めた。翔太は、その胸にたまったストレスを、不安や恐怖、苛立ちや悲しみを、どこに表したらいいか…、誰に話せばいいのか、わからなくなっていったんだと思う…。ある日…すごく大きな…何かをドンドンする…そうね…何かで机とかをどつくような音が聞こえて来て翔太の部屋に行ったら…ハサミで机を削ってた。目に涙をためて…狂ったように叫びながら…。｣

貴｢…。｣

知らなかった…。私は、私の過去を…翔太に話していたのに…翔太は私に…過去のことを…いじめを受けていた…とまでにしか言わなかったから…。

母｢でも、中学からはそのいじめっ子達と違うところに行っていじめもなくなった…。あの声で、翔太を馬鹿にする人は減った。そこから友達もできたし、歌にも出会えたって、あの子、すごく喜んでた。そして…今、あの子は元気をもらっていた歌で、人に元気を与えている…。貴方には…ずっと！見ていて欲しいの。あの子の事…。今の翔太がいるのは…あなたのおかげだと私は思ってるから…。｣

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