男性恐怖症の私が株式会社Ｓに入り、また、一から……やり直します…。

第246話 また、戻れるかな…？ ページ19

蒼井｢それと…｣

翔太は、何故か照れくさそうに頭をかきながらこう言った。

蒼井｢その、｢翔太兄｣ってやめてくれない？｣

貴｢え…？じゃあなんて呼べばいいの？｣

蒼井｢…前みたいに“翔太”でいいよ♪｣

えへへ…。そう言って照れ笑いをする。

貴｢…翔太。貴方は…。｣

蒼井｢…？｣

貴｢…ううん。何でもないよ。｣

蒼井｢そう？…ねぇ、A…。｣

貴｢ｯ…！｣

久しぶりに呼び捨てをされた。なんだか…違和感がある…。

蒼井｢…ごめんね。｣

貴｢え？｣

私がそう言おうとすると同時に…唇に生暖かい感触が重なった。

蒼井｢…ありがとう。｣

貴｢…どうして…？｣

蒼井｢…記憶を失っても…どうやら僕は君に一途なんだね！｣

貴｢なｯ…！｣

蒼井｢僕が病院のベッドで寝てる時から…、ずっと君のこと…目で追ってた…。コーヒーを入れに行ってくれたり、売店に雑誌とか取りに行ってくれたりしてた時…凄く凄く寂しかった…。君がいる時は、花が咲いたように明るくなる部屋も…、君がいなくなったら…何も無いただの殺風景な部屋に戻ってしまっていた…。次はいつ来るのか…どんなことを話してくれるのか…どんな歌を聞かせてくれるのか…とてもとても…楽しみだった。シェアハウスにきて、君と同じ部屋になるって聞いて…凄く舞い上がってたんだと思う。…ごめんね…無理させて…こんなこと、急に言われても困るよね…。…君が好きなのは…“前”の僕だもんね…。｣

貴｢…違うよ？私が好きなのは…全ての蒼井翔太だもん。私は、貴方の前向きで明るい部分も見た…。貴方の苦しむ姿も見た。全部、見たよ…？私は、だから、あなたの事を好きになった。｣

蒼井｢ごめんね…。矛盾してるよね。付き合っていたことも、婚約したことも…全てなしにしてくれって言ったのは僕なのに…。｣

貴｢…ううん。いいよ。もうそんなこと気にしてない…。｣

蒼井｢…記憶がない僕のことでも…愛してれるの…？｣

貴｢…うん。｣

蒼井｢君のことを守れない僕のこと、愛してくれるの…？｣

貴｢うん。｣

蒼井｢…ありがとう。｣

わかってる…。今のあなたは…全てじゃない…。でもｯ…！私は…

貴｢私は…貴方を愛したい…。｣

蒼井｢…！うん。｣

月の光が照らす薄暗い部屋でまた私達は唇を重ねた。

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