4話 ページ5
リビングから行けるそこは、お世辞でも綺麗とは言えず、でも女の子の夢が詰まったような、そんな空間。
小さい頃はなぜか怖くて近寄れなかったけど、今はかわいいとまで思えてしまう。
人形がたくさん置いてある部屋。
その部屋の真ん中で堂々と作業しているパパ。
作業に没頭していてこちらに気づいていない。
「おはよう」と声をかけると、やっと目線を上げた。
「おお、おはよう。今日はねぼすけだね」
私が今朝の話を聞いていることも知らず、いつも通りの様子だった。
一声かけたら、直ぐに作業に戻る。
「パパ、話したいことがあるんだけど」
私がそう言うと、再びこちらを見る。
「どうした?珍しいな」
手を止めて、体ごと私の方へ向けた。
「そこ、空いてるから座ったらどうだ」と指を指したその先は、空いていると言うか、ただの足の踏み場と言うか。
とりあえず私は言われた通り座った。
やっぱり窮屈だった。
「なにか飲むか?」
「ううん、いらない」
「ところでさ」と話を変える。
パパは不思議そうな顔で私を見ていた。
「パパは、私がヒーロー科に編入するの嫌なんだよね」
「え……」
「朝、ママに話してるの聞いちゃって」
その言葉を最後に、しばらくの沈黙が続いた。
「僕は、反対だ」
やっと返ってきた言葉は、やはり求めていたものとは違った。
私は隣に置いてある人形を触った。
男の子の人形。
「この人形にも、命は宿るの?」
そう訊ねると、「あ、ああ。できるよ」と返ってきた。
話題転換されたと思って動揺したみたい。
「やってみせようか?」
「ううん、今は必要ない」
「そうか」
「……ここにいる人形全部、大切だもんね」
話が上手く噛み合わないことに困っているのが、表情からわかった。
私はお構いなしに続ける。
「そう言えば、ヒーローになりたい理由、パパに話してなかったなって思って」
パパの眉間にシワが寄った。と思えば、いつも通りの優しい表情に戻った。
「そうだね、ぜひ聞かせてくれ」
「……私、この人形を守りたいの」
作業部屋を見回す。
パパが精魂込めて作った人形。
これらどれにも命が宿る。
私は再びパパに視線を向けた。
「私には、守りたいものがたくさんある。だから、ヒーローになりたい」
パパの表情は2転3転した。
そして、「わかった」と言った。
「この子達は、Aに任せようかな」
「うん、任せて」
そのときのパパの笑顔は、一生忘れられない。
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兎斗(プロフ) - この作品とても面白いです！続き楽しみにしています！ (2021年6月6日 1時) (
レス) id: d97bb948a4 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - あるむんさん» わざわざほんとにありがとうございます！めちゃくちゃ活力になります！これからもがんばります！！ (2020年6月4日 10時) (レス) id: ffef2d7169 (このIDを非表示/違反報告)
あるむん(プロフ) - さくらさん» お話はとても面白くて更新を楽しみに待っていますので！不快と言うよりは少し心配(？)になってコメさせて貰いました！！星とお気に入りしておきま〜す！ (2020年6月4日 0時) (レス) id: 2802bdf122 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - あるむんさん» 大丈夫かどうかはわからないです、、ただあくまで主人公の個性の名前として使わせてもらってるので、これから先話を進める上でもそのような意味ではでてこないです！もし不快に思われる方がいるならまた別で考えます。コメントありがとうございます！ (2020年6月4日 0時) (レス) id: ffef2d7169 (このIDを非表示/違反報告)
あるむん(プロフ) - ラブドール、主に男性がアレを楽しむ為に作られた人形を意味しますが大丈夫ですか？ (2020年6月4日 0時) (レス) id: 2802bdf122 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら | 作成日時：2020年5月21日 20時
