3話 ページ4
これだけはさすがに涙が出てきた。
こんなに気持ちが突き落とされることなんかこの先よっぽどないと思う。
これまでのヒーロー科を見てこれば、この先何があるのか不安になるのは私でもわかる。
オールマイトの引退後、明らかに日本の犯罪件数は上がってるし。
圧倒的な平和の象徴がいなくなってから、私たちの生活に暗い影が落ちるようになった。
だからこそ、これからヒーローの卵であるヒーロー科の生徒が力を合わせて戦っていかなきゃいけないのに。
パパはわかってないんだよ。
守らなきゃいけないものがたくさんあるんだよ。
しばらくして、部屋のドアが開けられた。
「A?起きてる?」
私は「うん」と返す。
鼻の詰まった情けない返事だった。
「ママもう仕事行くけど、編入の書類かけるとこ書いておいたから、あとは自分で書いてね」
編入。その言葉を聞いて、止まった涙がまた溢れてくる。
「A……?」
ママの足音が近づいてくる。
「どうしたの」と背中をさすってくれるその優しさに、涙は止まる方法を忘れてしまっていた。
「私、ヒーローになれないのかな。皆を守ることできないのかな」
「そんなことないよ。ほら、ヒーロー科に編入できることが何よりの証拠じゃん」
「でもパパは嫌がってるんでしょ?」
ママの顔は見れなかった。
ママは私が朝あの話をしていた傍にいたことを悟ったのか、何も言葉を返してこなかった。
「私には、守りたいものがたくさんあるの。そのために、ヒーローになりたいの」
ママもパパも、この家にある人形も。
今、オールマイトがいなくなって不安に思う人々も、何も知らずに笑う子供たちも。
「そうだよね。大切だもんね」
そう言ったママの声は震えていた。
「大丈夫。Aは立派なヒーローになれるよ」
ママはクシャッと私の頭を撫でたあと、「じゃあ、仕事に行ってくるね」と言って私から離れた。
「今の話を聞いて、安心してAを送り出せる。パパにも同じこと言ってごらん」
そう言い残して、ママは部屋を出ていった。
私は起き上がって、目元を袖で拭った。
そう言えば、ヒーローになりたい理由をパパとママに話したことはなかったな。
そうだよね、言わなきゃ伝わらないよね。
私は気合を入れるため思い切り両頬を叩いた。
ベチンッなんて言葉がよく当てはまるいい音が鳴る。
……叩くと痛いから、やめとけば良かった。
なんて思いながら、パパの作業部屋へ向かった。
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兎斗(プロフ) - この作品とても面白いです！続き楽しみにしています！ (2021年6月6日 1時) (
レス) id: d97bb948a4 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - あるむんさん» わざわざほんとにありがとうございます！めちゃくちゃ活力になります！これからもがんばります！！ (2020年6月4日 10時) (レス) id: ffef2d7169 (このIDを非表示/違反報告)
あるむん(プロフ) - さくらさん» お話はとても面白くて更新を楽しみに待っていますので！不快と言うよりは少し心配(？)になってコメさせて貰いました！！星とお気に入りしておきま〜す！ (2020年6月4日 0時) (レス) id: 2802bdf122 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - あるむんさん» 大丈夫かどうかはわからないです、、ただあくまで主人公の個性の名前として使わせてもらってるので、これから先話を進める上でもそのような意味ではでてこないです！もし不快に思われる方がいるならまた別で考えます。コメントありがとうございます！ (2020年6月4日 0時) (レス) id: ffef2d7169 (このIDを非表示/違反報告)
あるむん(プロフ) - ラブドール、主に男性がアレを楽しむ為に作られた人形を意味しますが大丈夫ですか？ (2020年6月4日 0時) (レス) id: 2802bdf122 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら | 作成日時：2020年5月21日 20時
