28話 ページ29
ヒーロー仮免許試験まで残り1週間を切った。
正直に言うと、ここまでの記憶はあまり無かった。
毎日訓練に勉強にと同じことの繰り返しで、私の脳は記憶をするという機能を停止させた。
そしてこれから過ごす1週間は、緊張のしすぎで記憶に残っていない。
相変わらず酷く喉が渇いていた。
そして、気づけば仮免許試験当日だった。
朝寮を出る前にA組皆からの熱い応援を受け、私は今まで習ってきたことを全力でぶつけた。
と、思う。
これもまた喉が渇いていたことしか覚えてない。
もはやこれから先も喉が渇いて水分補給をし続ける人生しか思い浮かばなかった。
加えて来世は水の妖精になっている夢を見るほどだった。
・
合格発表当日。
もはやここまでカットされるくらいならなぜ今まで悟りを開いたと勘違いされるほどのハードな生活を送ってきたのかと、少しばかり自分を生み出した世界を恨みたくなった。
合格発表日と言っても臨時仮免許試験を受けた者だけが特別な日なので、私は合格発表の時間まで皆と一緒に授業を受けていた。
と、思う。
相変わらず記憶はない。
気づけば校長室に相澤先生と共に呼び出されていた。
「さて、今日君を呼び出したのは他でもない」
校長先生は今日も人間じゃなかった。白かった。
いや、そんなことはどうでもいい。
喉が渇いた。
「緊張しているようだね。まあ、座りたまえ。話はそれからだ」
私と相澤先生は校長先生の向かいのソファに座った。
校長先生は封筒を持って私たちの前に腰を掛けた。
「今朝、私の手元に届いた封筒だ。内容はヒーロー仮免許試験の合否。臨時試験はその場での合格発表ではなく、こうして後日封筒で届く」
「はい……。噂では聞いていました」
「この封筒を見るのも久しぶりだな」
校長先生は懐かしんでいるようだった。
まずヒーロー科への編入自体珍しいのだから、臨時仮免許試験の合格発表なんかそうそう聞かないに決まっていた。
……そんなことはどうでもよかった。
はやく結果を知りたいのだ私は。
「まあこの封筒が届いたということはそういうことだ。おめでとう」
「……え?封筒開けないんですか?」
私はあまりのあっさりさに拍子抜けだった。
「この封筒は合格の場合にしか届かないものだ。だから、おめでとう。これで君も皆と肩を並べてヒーローを目指すことが出来る」
どうやら私はヒーロー仮免許を取得したみたいだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
兎斗(プロフ) - この作品とても面白いです！続き楽しみにしています！ (2021年6月6日 1時) (
レス) id: d97bb948a4 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - あるむんさん» わざわざほんとにありがとうございます！めちゃくちゃ活力になります！これからもがんばります！！ (2020年6月4日 10時) (レス) id: ffef2d7169 (このIDを非表示/違反報告)
あるむん(プロフ) - さくらさん» お話はとても面白くて更新を楽しみに待っていますので！不快と言うよりは少し心配(？)になってコメさせて貰いました！！星とお気に入りしておきま〜す！ (2020年6月4日 0時) (レス) id: 2802bdf122 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - あるむんさん» 大丈夫かどうかはわからないです、、ただあくまで主人公の個性の名前として使わせてもらってるので、これから先話を進める上でもそのような意味ではでてこないです！もし不快に思われる方がいるならまた別で考えます。コメントありがとうございます！ (2020年6月4日 0時) (レス) id: ffef2d7169 (このIDを非表示/違反報告)
あるむん(プロフ) - ラブドール、主に男性がアレを楽しむ為に作られた人形を意味しますが大丈夫ですか？ (2020年6月4日 0時) (レス) id: 2802bdf122 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくら | 作成日時：2020年5月21日 20時
