出会い ページ1
ついに今日がやって来た。
私は持っていたバックの持ち手を握り締め、高校の校門を通り抜けた。
今日は推薦入試の日だ。
私は部活での好成績を残し、見事推薦を獲得した女子中学生。
ここで受かれば皆が四苦八苦している頃、私は一人遊び放題ということになる。
割り当てられた教室に辿り着き、自分の席に座る。
他にも推薦志望者はいるようだけれど、絶対に受かってみせる、そう自分に言い聞かせた時、自分の席の隣に座る生徒がいた。
他校の男子生徒だ。筆箱を取り出して筆記用具を準備している。
「私も準備しないと……」
シャープペンシルと消しゴムを取り出して机の上に置く。ノックを押してシャー芯が入ってるのも確認。
「よし」
とその時、隣でずっと続くノック音がし出した。
男子生徒がずっとシャーペンのノックを押しているがシャー芯は出てきていない。
シャー芯が無いことに気づき、筆箱の中を探しているが、シャー芯の予備は一向に出てこない。
まさか無いのかこの人、シャー芯。
書くものがなければ受験出来ない。運悪いなあこの人……。
「終わった……」
男子生徒はそう呟き頭を抱えた。
見るに見かねて声をかける。
「あ、あの……0.5のシャー芯ならあるんですけど……良ければどうぞ……」
私の使用しているシャー芯は0.5mm。恐らくこれを使っている人の割合は多いはず。
「え、あ……すいません僕0.3なんです……」
まさかの0.3mmだった。
「あ……そうですか……ご愁傷様です……」
「はい……」
この後彼は試験官に鉛筆を借りていた。
これが私、Aと不幸くんの出会いである。
「なんで0.3mmなんだよマニアックか」
「ほっとけ」
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作者名：海藻さん。 | 作成日時：2018年12月29日 15時
