ヘチャンの昔話 前 ページ12
ヘチャン視点
最初に言っておくと、僕は明るく前向きで
どちらかと言うと楽観的な性格なのである。
僕が僕の世界で生きている以上
この世界の主人公は僕だ。
何があってもなんとかなるし
最終的には僕がいれば
みんな幸せでいられるように出来ている。
だからこそ、この物語の結末は
絶対にハッピーエンドじゃないといけないんだ。
「誰かの神様をするのも楽じゃないね」
そう言ってAヌナが困ったように笑った。
まったくもってその通りなのだ。
全面的に同意するしかなくて頷くことしか出来ない。
アイドルを見るファンの強い眼差しは、時によく、信仰に似ているとさえ思う。
僕たちの周りにはいつも堅苦しい誓約が取り巻いているけど、例えばその“決まり事”を破ったとしてもさほど実害は無い。
けれど誰かに気付かれてしまえば、全てが一気に終わりへと向かう。
その点、Aヌナは何事にも忠実に思えた。
僕たちの中でも一番と言えるくらい忠実に、数多い“決まり事”を守っていたのはこの人だ。
目に見える範囲でも、トゲだらけの花道を踏み外すことはなかった。
ヌナだって人間なんだから、多かれ少なかれ隠し事くらいはあっただろうけど。
僕？
僕はそうだなぁ、まあそこそこ。
誰だって皆そんなもんだ。
「だからね、ヘチャン、」
「……ちょっと待った、ヌナ」
「ん？」
「なんだか嫌な……すごく悪い予感がする。久しぶりのAヌナに舞い上がってたけど、話のトーンが……なんとなく……」
「そう？」
「なんだこの、いったい……今からするのって良い話？それとも悪い話？」
「どうかな。人によると思うけど」
そこで僕は直感的に気付いてしまった。
じっと見つめた先にあるAヌナの瞳は、なるほど恋をしている眼差しだという事に。
だってその目はいつもとは違う、高い温度を保っているように見える。
目の温度を測って調べる事なんて出来ないから、目を見て解るなんて本当は嘘っぱちなんだけど。
それでもAヌナのその目が、その表情が、全てを物語ってるんだからそうとしか思えない。
僕だってヌナの事を良く知っている。
だからこそ解った。
恋をして、それと同時に苦しんでいる。
Aヌナも、僕がその事に気付いていると悟ったようだった。
だって賢い、僕の事だもの。
この後続く言葉さえ、手に取るようにわかってしまう。
「私はね、ここから出て行こうと思うの」
.
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さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (
レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…！作品の方また楽しんでいただければ幸いです！ (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね！失礼いたしました...！ (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜！！Twitterはしてないので教えられず……！ (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せの
| 作成日時：2021年8月2日 0時
