最低な小説の主人公

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私は今、ちょっと…いやかなりの衝撃を受けてる。

チラチラと仔犬のような顔でこちらを伺っていたドンヘさんが、眩しいぐらいのライトがたかれたセットへと歩いていくのが見えて。

昨日のことがあるから、気にならない訳もなく…

つい目で追ってしまったのがダメだった…。

だって…

「かっこいい…」

ライトとカメラのフラッシュを一身に浴びるドンヘさんはさっきまでとは別人で。


キリッと睨む様な男らしい目線。

そうかと思えば少し目を伏せる姿は切なくて。

次々と変わる表情やちょっとした仕草全てが人を惹きつける。

そして……

ドンヘさんが唇を少しだけ開けて、指を唇に這わす。

あの時の…キスを思い出させる様な色っぽい表情で。

ドクンと心臓が跳ねる。

甘い…甘い唇。

上唇もした唇も優しく食まれて、溶けてしまいそうな…………。

「Aちゃん、やらしー顔してるよ(笑)」

そう言って、姉に指摘される。

ハッと我に返れば、自分の指がドンへさんと同じように唇をなぞっていたことに気がついて。

一気に顔に熱が集まる。

「ふふふ。しょうがないよね〜。絶対ドンへ君も昨日の事思い出してる顔だもん。」

「姉さん!!」

頬を両手で挟んで赤くなってるのを隠す。
姉さんが日本語で話してくれてるから他の人には伝わらないはずだけど……。

めちゃくちゃ恥ずかしい(泣)

「そうだ!!!」

不意に姉が手をパンと叩いて。

ルンルンでカメラマンさんの方に向かって歩いていく。

ーーー嫌な予感。

とっても、とっても嫌な予感。

姉さんがこの状況で思いつく事なんてろくな事じゃない!!

に…逃げなきゃ!!

すぐにスタジオの出口に向か…おうとしたところで。

『Aちゃん!!』

と大声で姉に呼ばれる。

撮影中の大声に、皆の視線を背中にひしひしと感じて…

泣きたい気持ちでゆっくりと振り返る。

ニコニコ笑顔で姉がこっちに手を振っていて。
その隣には、同じくニコニコ笑顔のカメラマンさんが手招きしている。

きっと、近づかないなんて選択肢は用意されていなくて。

意を決して姉に近付く。

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