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「A」
「どぅわっ!!」
呆然と雨に濡れる窓を眺めていると突然耳元で名前を囁かれる。Aが飛び上がって振り返ると、悪戯が成功したと言わんばかりに悪趣味な笑みを湛えた伊礼がいた。
「普通に話し掛けて
「あはは。無防備だったから、つい」
「理由になってない!」
「悪戯に理由なんかいらないでしょ」
「かーっ! ああ言えばこう言う!!」
ホンットになんで私はあの時フラなかったんだろう、と何回目かの後悔をした。てか、名前で呼んで良いって許可してないし。
「で、どうしたの? 理由も無く突っ立てた訳じゃないんでしょ」
「そこら辺の察しは良くて助かります」
Aはうんざりした顔で事の経緯を話し、打開策を問うた。しかし伊礼は表情を変えずに「わぁ、それはご愁傷さま」とだけ返す。
「イヤ、そこは助けてくれる流れじゃん」
「流れなんて知らないよ。実際僕には関係ない事だし」
「ぐう正論」
この男、我関せずを貫く腹積もりだ。血も涙もない。
「まぁそう言わずにさぁ......恋人を助ける為だと思って♡」
「都合の良い時だけ恋人扱いしてくるのは卑怯じゃない?」
「使える手は使う主義なのだよ」
「ふーん、なら僕も“そう”しようかな」
「......ん?」
咄嗟に身構えたAに伊礼はご機嫌な様子で等価交換の条件を言い渡す。
「僕の事、これから下の名前で呼ぶなら...お望み通りにしてあげる♪」
「ジーザス…」
Aは思わず天を仰いだ。実際見えるのは無機質な天井なのだが。
「ところで、他の人には聞いたの?」
「私に傘をシェアしてくれるほど仲良しな人間がいると思うか?」
「そっか。虚しいね」
「お前さてはわざと聞きやがったな」
────
「部活終わるまで待つにしても、なんでこんな所で寝てるの...」
最終的に承諾を得た伊礼。そして部活後、NYAINで図書室に呼び出されて来てみると、当の本人は奥のお一人様専用自習机でスヤスヤと寝息を立てていた。場所的にてっきり宿題でもしていたのかと思ったが、机上には何も広げられていない。端から寝る気満々だったらしい。
「寝るなら保健室のベッド借りれば良いのに」
伊礼は文句を垂れながら彼女の肩を軽く揺すって起こそうと試みる。しかし「んー...」と呻き声をあげるだけで、なかなか起きなかった。
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楽空(プロフ) - 空木さん» 返信遅くなりましたが、ありがとうございます。頑張ります! (2022年9月17日 2時) (レス) id: ac5eac6eff (このIDを非表示/違反報告)
空木 - ウインボはあんまり無いかな...と思って検索したらまさかの康人くん(推し)で吃驚しましたありがとうございます...‼更新頑張って下さい!! (2022年8月4日 18時) (レス) @page16 id: 7a7324414c (このIDを非表示/違反報告)
楽空(プロフ) - 柚莉愛さん» ありがとうございます。モチベめちゃ上がりました。がんばります。 (2022年6月16日 21時) (レス) id: 0b829f5534 (このIDを非表示/違反報告)
柚莉愛 - 頑張ってください!応援してます! (2022年6月14日 15時) (レス) id: cefdbc04a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白さん。 | 作成日時:2022年2月6日 23時