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絆されている。その事実は私の胸中を一変させた。ここまで乱心している今となっては、最早潔く認めざるを得ない。
しかし、だ。この変化は必然であるとも感じる。告白される前まで碌な人付き合いをしてこなかった私には気軽に話せる相手も少なく、況して四六時中行動を共にする相手なんて居なかった。その穴を埋めたのが伊礼君だった。なら私が彼の事を図らずも考えてしまうのは仕方ない事。ただそれだけの事だ。
コンビニのショーケースを眺める彼を見遣りつつ、心の中でそう結論付けた。
図書室を出た後、もう偶然とは信じ難くなってきたが部活終わりの伊礼君と遭遇した。個人的には最悪のタイミングだったが表に出さぬよう努め、彼の希望でコンビニに立ち寄り、今に至る。
特に欲しい物は無いが暇潰しに陳列されたお菓子を眺めていると、名前を呼ばれた。
「何?」
「Aさんも何か買うの?」
そういう伊礼君の手には明らかに甘そうなチョコレートドリンク。
「うわ、めっちゃ甘そうだね」
「普段はこんなカロリー爆弾買わないんだけどね。部活でコレ飲んでる人見て、たまには僕も飲んでみようかなって」
「フーン……寝る前にちゃんと歯磨きしなよ」
「君は僕の母親なの?」
「イヤ君を産んだ覚えはないけど」
「冗談だよ。だからそんな嫌そうな顔しないでよ」
結局私は何も買わずレジへ向かった背を見送り、外に出て彼を待つことにした。
外に出ると、すっかり茜色に染まった空と照り付ける夕暮れが眩しかった。同時に夏に近づきつつある生温い風に不快感を抱く。
(……そういや、私なんであの時すぐに伊礼君のことだって分かったんだろう)
思い返すは司書さんとの会話。
『今日もあの男の子と一緒に帰るの?___』
そう聞かれた時、自然と想起したのは伊礼君だけだった。いやでも、コレは一緒に帰ってる男子は伊礼君しかいないから必然的に___
その事実もまた先の理由で飲み込んだ。これは長く考えない方が良いやつだ。続けるほど言い訳紛いに聞こえる。
「はい」
「?何これ」
「ベーグル。無料クーポンあったから、あげる」
「おぉ…ありがと」
コンビニから出てきて早々、出し抜けに差し出されたベーグルを素直に受け取った。何の条件も無しに受け取って良いのか疑問だが、貰える物は貰う主義なので有り難く頂戴する。
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楽空(プロフ) - 空木さん» 返信遅くなりましたが、ありがとうございます。頑張ります! (2022年9月17日 2時) (レス) id: ac5eac6eff (このIDを非表示/違反報告)
空木 - ウインボはあんまり無いかな...と思って検索したらまさかの康人くん(推し)で吃驚しましたありがとうございます...‼更新頑張って下さい!! (2022年8月4日 18時) (レス) @page16 id: 7a7324414c (このIDを非表示/違反報告)
楽空(プロフ) - 柚莉愛さん» ありがとうございます。モチベめちゃ上がりました。がんばります。 (2022年6月16日 21時) (レス) id: 0b829f5534 (このIDを非表示/違反報告)
柚莉愛 - 頑張ってください!応援してます! (2022年6月14日 15時) (レス) id: cefdbc04a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白さん。 | 作成日時:2022年2月6日 23時