第一譚 帰宅電車にて微睡む ページ2
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____それは実に唐突だった。
今年で高校一年生となった鈴木A。
そんな彼女に人生で初めての行事が回ってきた。
それは高校生活では避けて通ることのできない大イベントである文化祭だ。
それが到頭明日にまで迫った夜。
前日準備のため最終下校時間まで学校に残っていたAは力無く石造りの柱に背を預け、草臥れていた。
「疲れた...
でもまぁ、なんとかなったな...」
掠れた喉でほっと息をつくと、これでクラスメイトにあれこれ言われなくて済むのだ、とかなり怯懦な心であるからにして安堵した。
こうなってしまった悪因はAに一割と周りの環境九割にあった。
係決めの際、絵が描けるからという安直な理由だけで強制的に旗係に任命されてしまったのだ。
クラス内での地位維持のため彼女はそれを断ることができず、しかも自分が絵を描くのに掛かる時間は人の数倍掛ることも同じ理由で言えずして、作業がなかなか終わらずこんな真夜中まで残る羽目になってしまったという訳なのだ。
断れなかった愚鈍は自分も悪いが...
手伝うよと公言したのにも関わらず、口を動かすだけで手は動かさない痴れ者が高がお喋りのためだけの存在理由をホラ吹き、下劣な態度でうちに接したことに苛立ちが募る。
おまけに機嫌を損ねないように気を使っていた疲労もあってかなり作業が遅れた。
ただペンを持った手が宙を行き来した光景を思い出しては、また言い様の無い憤懣が胸中を渦巻いた。
まあそんなこんなで現在駅内のホームで電車を待っていたのである。
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作者名:食べかけの春雨さん。 | 作成日時:2019年10月11日 23時