絶望のはじまり：(5) ページ7
．
｢んじゃ、各自寄り道せずに
速やかに帰宅すること、以上｣
｢起立、気を付け、礼｣
夫々が思い思いに挨拶し、放課後になった。
Aはどこか真剣に
テキパキと教材を鞄の中に詰めると
足早に席を立つ。
不意に突然悲鳴にも似た女子の歓声が響き渡り、
Aの顔が引き攣った。
彼女の視線の先は
自分が出ようとしていた教室の出入口。
そこには他クラスの女子が殺到しており
通せんぼの様に出入り口を塞いでいた。
(間に合わなかったか...
今日の授業、一寸遅れたからな...)
Aは諦めたように鞄を机に置いた。
ここ、２年Ｂ組には怪心学園の中でも
顔面偏差値が特に高い、
美影 ツバサという男がいる。
その美形は学園内の大半の女子を
虜にできるほどに。
加えて、彼の立ち振る舞いは
紳士的で、対人能力も申し分無し。
まぁ、俗に言うパーフェクト男子な訳で
彼のファンは今も尚続出しているのだ。
そしてファンの子たちは放課後になると、
あの奇妙な事件が起きない限り
２年Ｂ組の教室に押し寄せ、
必死に自己アピールしてくるのだ。
Aはその最早号令となっている騒動を
予想して足早に去ろうとしていたのだが...
大量の目をハートにした女子達によって、
完全に包囲されてしまったのである。
(違うクラスに行きたい...)
まぁ今日は特に予定は無いし、
居眠りでもして彼女達が行くのを待とうか。
Aは鞄からヘッドフォンを取り出し
耳栓代わりに装着すると
机に突っ伏して瞳を閉じた。
放課後、何処で暇を潰そうか考え乍
ゆっくりと眠りに入る。
｢キャーッ！！！｣
(っ！)
だがその眠りもすぐに妨げられた。
突如鼓膜を揺らした甲高い悲鳴によって。
異常を察知したAは目を覚ます。
今度の悲鳴は歓喜に満ち溢れた物ではなく
恐怖を孕んだ、
驚愕からきた悲鳴だったからだ。
(今のは、外からかっ！！)
Aは悲鳴がした元へと
急ぎ足で向かった。
＿＿＿その口に弧を描きながら。
彼女は心の底から待ち望んでいたのだ。
平凡で退屈な日常を崩壊させる、
怪奇的な現象を。
そしてそれを紐解いて、
真相を暴き、探求心を満たす。
その欲だけが、
彼女の原動力となっていた。
然しその狂おしいまでに昂った好奇心が
後に悲劇を呼ぶことを
彼女は知る由もなかったのだ＿＿＿
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蓮花 - 夢主タイプです！更新頑張ってください！ (2020年12月17日 7時) (
レス) id: ed23f405ff (このIDを非表示/違反報告)
焦げマシュ(プロフ) - 夢主の設定めっちゃ好きです！！これからも無理せず更新頑張ってくださいね！応援してます (2020年5月23日 23時) (レス) id: 25bc55c09d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：楽空 | 作成日時：2019年10月21日 17時
