ep326 ページ29
空から砲弾の爆ぜる音がする。
きっと今頃、海上では見廻組と奈落が撃ち合っているはずだ。
遠くの空を眺めていれば、
「橘参謀——ッ……!」と叫ぶ声がする。
振り返ると真選組の隊士達が私に刀を構えていた。
「……さすが真選組。こういう時打たれ強いね」
息はあるのに未だに意識を取り戻さない見廻組の隊士達を乱雑に叩き起こしながら、そう笑いかけた。
「……っ!ふざけるな!!どういうことか説明してもらう!!」
刀の切っ先を私の首元まで近づけて叫ぶが、正直それに構ってやれるほどの時間はない。
「局長達とはぐれて焦る気持ちは分かるけど今はこういうことしてる暇なんか無いの」
そう言いながら刀の先をぐい、と退かす。
「簡潔に言えば、見廻組の敵は最初から奈落。息ある人間全員連れてここから離脱する。協力して」
意識を取り戻してうぅ、と唸る隊士の頬をはたきながらそう言うと、仕方なさげに刀を下ろす面々。
「私のことは後で煮るなり焼くなりすればいいから。行くよ」
そう言って走り出して数分、佐々木局長のインカムから松平長官との会話が聞こえる。
《佐々木にとっては幕府も部下も俺達も……いや、己でさえも倒すべき敵だった》
さすが松平長官、鋭い。
でもその台詞、見廻組には聞かせらんないな…と背後から懸命な表情でついてくる彼等を見て思った。
今の彼等を駆り立ててるのは局長の作戦を実現したい、その想いだけだ。
それを微塵も分かっていない当人は松平長官に笑って返す。
《失敬ですよ松平公。私にだってメールを返す相手くらいいます。ただ大事なメールを届けられないでいましてね、電波が悪くて……》
インカム越しに苦しげな声が伝わってくるのと同時に、どこか嫌な予感が駆け巡った。
《私はただ電波が拾える場所を……メールが届けられる場所を探しているだけなんです》
そう、残念なことにこういう時の私の“嫌な予感”は当たることが多い。
《ここならきっと届く——》
その言葉と重なる刀の音、血飛沫の音。
《この国の残骸の上——侍達の骸の上なら……きっと届く》
狂気じみたその言葉にまさかと思った瞬間だった。
ガキンと金属とぶつかるような音がしてインカムからザァーーと砂嵐のような音しか聞こえなくなった。
何が起こったかわからないままその雑音を聞いていたが、次の瞬間ハッとした。
あの金属音——……刀か!
「くっそ!!あのオッサン、インカム斬りやがった!」
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時