ep291 ページ44
そう、それっぽっちの話ではないのだ。
喜々が江戸で将軍ヅラをしている限り、そして天導衆によってそれが裏付けされている限りあちらのやりたい放題。
「『茂々公は死んだ。京で新政権を樹立しようとしているのは偽者の賊だ』と言って討伐することも言ってしまえば可能ですしね」
「そんな……」
「気持ちは分かりますが弱気にならないでください。こちらの強みはそれこそ茂々公の存在そのものなんですから」
肩を落としそうになった将軍様に言う。
そして隣の長官に目配せをする。
きっと言うまでもない。
茂々公がこちら側の唯一の正当性である限り、絶対に、絶対に彼の命を護らなくてはいけないということ。
「さぁ私の仕事はここまでです。後は任せましたよ、長官」
「あぁ、今までご苦労だったな」
私達のやり取りに眼を白黒とさせていた将軍様が「そうなのか?」と私に尋ねる。
「はい、契約はここまです。京までご一緒出来ず、申し訳ありません」
「いや、そなたには充分なほど助けてもらった。礼を言う」
「ありがとう」と言うものの、将軍様の眼には不安が見え隠れしている。
「将軍様、今は来るべき時のための守りの時です」
「どうか耐えてまた江戸で――」と言いかけた時に突然、将軍様がそれを遮った。
「参謀、そなたは確か二度同じ主には仕えないのであったな?」
「え?……あぁ、はい」
あまりに不意で戸惑えば、素っ頓狂な声が出た。
「そうか、ということは片栗虎はもうそなたを雇えないのだな?」
「えぇ、まあ……そうなりますね」
一体この話がどこに向かっているのか分からないまま頷けば、顎に手を当てて考える素振り見せる将軍様。
しばらくして顔を上げると言った。
「ならば再起の時は私がそなたを雇おう」
「え?」
「嫌か?」
「い、いいえ、とんでもない」
まさかそんなことを言われると思っていなかった私は我ながら珍しく他人に驚かされる羽目になる。
はて、徳川茂々とはこんな人間だったろうか……。
……いや、きっと今回の件が彼の器を大きくしたのだろう。
「将軍直属の参謀、ですか……いい響きですね」
にやりと不敵に笑えば、将軍様は満足げに頷いた。
「再起の時は必ずまたお側でお仕えします」
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ギラッフェ(プロフ) - ゆうゆさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さってて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!テストに間に合ってよかったです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうゆ - 更新凄く楽しみに待ってました!応援してます、これからも頑張ってください!! (2021年2月26日 1時) (レス) id: 90e018deaa (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - めちゃめちゃ楽しみにしてました!これからの展開が楽しみですこれで明日のテスト頑張れます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: a90e951796 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - じゅうぞうさん» コメントありがとうございます!なかなか更新できずすみませんでした。応援ありがとうございます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2020年8月29日 0時