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ep281 ページ34

晋助に手を引かれて帰る道中


どうやら私を探してくれていたらしい銀時とヅラとも合流し……


あれほど酷かった雨風も松下村塾に戻ってくる頃には止んで、嵐が嘘のようだった。


4人でびしょ濡れのまま門をくぐれば、目の前には松陽が佇んでいた。

晋助の影に隠れていた私を見ると、少し驚いたように目を見開いてからいつものように笑い、



「全員無事で良かったです」

とだけ言うと静かに居間へと戻っていった。



その後ろ姿に私は特に声をかけるでもなく、風呂に入って冷えた身体を温めた。





そして風呂上り、ふと目に入った松陽の横に腰掛ける。



しばらくして――




「……なんで知ってたの、私の眼のこと」


自分でも驚くくらい、何のこともなく尋ねた。

しかし一方の松陽は何故かその問いに少し言葉を詰まらせる。


「……知り合いに、似た眼を持った人がいたんです」

「そう」



珍しく歯切れの悪い様子を見せた松陽を横目に、私はハサミを差し出した。


「前髪、整えてよ。晋助の切ったままだとガタガタだから」


それを聞いてハサミを受け取った松陽はゆっくりと私の前髪を手に取ると、サクリと切った。

2人だけの居間にハサミと髪の落ちる音だけが響く。




その音を聞きながら、私はさっきの“知り合い”の話が気になって問うた。


「松陽の知り合いは自分の眼をどう受け入れたの?」


「受け入れた……というより向き合うことにした、という感じでしょうか。
どうせ変わらないことなら、せめて誰かの為になることをしようと決めたんです」



誰かのため……か。


「正直、他人のために眼を使ってもろくなこと無いけどね」


思わず唇を尖らせた私に、松陽は言う。



「いいえ、他人の為ではありません。“大切な誰か”の為です」



そう聞いても、私にはその2つの違いがあまり分からなかった。



「A、人は他者と関わる中で自分という器の輪郭をはっきりさせていく生き物です。
自分を大切にして初めて、誰かを大切に思うことができるんですよ」


松陽の語るそれは私には思い浮かべることできないものだった。分かったことといえば、私にとっては前途多難そうであることだけ。


でも、



「Aもいつか、大切な誰かの為にその眼を使いたいと思える日が来るといいですね」



視界に広がった松陽の笑顔を見て、何となく……そんな未来があってもいいような気がした。



 

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ギラッフェ(プロフ) - ゆうゆさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さってて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!テストに間に合ってよかったです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうゆ - 更新凄く楽しみに待ってました!応援してます、これからも頑張ってください!! (2021年2月26日 1時) (レス) id: 90e018deaa (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - めちゃめちゃ楽しみにしてました!これからの展開が楽しみですこれで明日のテスト頑張れます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: a90e951796 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - じゅうぞうさん» コメントありがとうございます!なかなか更新できずすみませんでした。応援ありがとうございます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2020年8月29日 0時

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