ep34 ページ36
重い荷物をえいしょ、と再び手繰り寄せて肩にかける。言わずもがなクソ重い。
……うん、やっぱりあんパンはボツだな。自分で買え山崎君。
「ってことで私は失礼するよ」
そう言って回れ右。
屯所へと帰ろうとしたその時――――……
チャキッ――……という音と共に背後から殺気を感じる。
「覚悟ォォォォオオオオオッ!!!」
振り返れば目の前に迫った刀。
あちらは勝手に勝ちを確信したのかニヤリと笑う。
しかし次の瞬間、腹を押さえて地面に伏したのは浪士の方だった。
私を知らない面々は分かりやすく狼狽する。
「まぁ、正面から斬りかかって来なかったことは褒めるよ。流石、元同志。私のことは一応把握しているみたいだ」
「何が元同志だ。……こちらに手を貸さぬというのなら斬り捨てるのみ!」
「いやぁ〜ヅラは幸せ者だねぇ。自分の身を案じて不穏分子を片付けようとしてくれる部下がいるなんて。
でも残念ながら君達に私は殺せない」
そう言いながら私は手に持っていた大根を見つめた。
スパッと美しい断面で切れた真っ二つの大根。それをポイ、と買い物袋にしまう。
「馬鹿な……まさか大根を盾に……?」
頷いてにこりと笑えば、私の足下で伏した浪士が悔しそうに声を絞り出す。
「我々相手には……刀を抜く、までもないと……愚弄しているのかッ!?」
「私はいつだって真剣だよ。特に君達に対してはね」
「……どの口が言う」
やれやれ手厳しいなぁ。
私は肩をすくめ、「じゃあヅラに宜しく」と言ってその場を去った。
背後から追ってくる気配もなく、屯所までは無事に帰れそうだ。
しかし私の足は道の真ん中で歩みを止めた。
あーどうしよ。屯所に帰る気になれない。
何とも言えない疲労感と虚脱感で思わず空を仰ぐ。
昔の仲間に刀向けられるって案外心に刺さるな。
……重い荷物が余計に重く感じる。やだな、この感覚。
「……銀時のとこにでも転がり込んでみるか」
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ギラッフェ(プロフ) - からちぇさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも応援お願いします! (2020年9月11日 22時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
からちぇ - ドストライクな作品でした!めちゃくちゃ好きです (2020年9月10日 19時) (レス) id: b750728265 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 今井月華さん» コメントありがとうございます!ちょっと気を抜くとすぐ体調崩しちゃいますからね、気をつけます。月華さんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ハニーさん» ご心配ありがとうございます!これからインフルエンザの季節ですし、ハニーさんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
今井月華(プロフ) - お疲れ様です。体調にはお気をつけ下さい^_^ (2018年11月2日 21時) (レス) id: 7d138352b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年10月1日 22時