ep30 ページ32
この両眼を除いて――
その言葉に思わず口を噤んだ沖田君。
しかしよく考えれば当たり前のことだ。視力20の人間なんてそうホイホイ居るもんじゃない。突然変異にしては度が過ぎている。
「物心ついた時からこうだからもう慣れたよ。
天人の眼を移植されたか、あるいは何かいじられたか……理由は知らないけど」
いずれにせよ、明らかな人体実験の賜物ってことになるが……。それについては何も覚えてないし追及するつもりもない。
「ね、こんな話わざわざ聞きたくもないでしょ？だから話さなかっただけだよ」
笑いかけた私に沖田君は何も言わなかった。
「はい、分かったら部屋から出て行きなさーい。こんな時間に異性の部屋にいるなどけしからんぞー」
しっし、と手を振ってみるものの思い詰めたような表情で固まる彼。肩を叩いてサッサと帰そうとするが応答なし。
……参ったな。困らせるつもりは無かったのに。
そう思っていると
「すいやせんでした」
ぼそりと声が聞こえた。
私はやれやれと深い溜息を吐き沖田君の額にデコピンを食らわす。
「いでっ……」
「ばぁーか。君が謝ることじゃないでしょうが。
はいはい、私はもう寝るからサッサと出て行く〜」
そう言ってバサリと布団を被った私の背後で襖の閉まる音がする。
私はそのまま目を閉じて再び眠った。そしてすっかり忘れ去っていた懐かしい思い出を夢に見る。
「松陽、私がここで眼をくり抜いて捨てるって言ったらどうする？」
「それは困りますね、教科書も読めなくなってしまいますし……」
笑顔で言う彼は幼い私の言葉など真面目に聞いてはいない。
「教科書の内容なら全部頭に入ってる。最悪見えなくても困らないけど？」
「しかし、銀時が貴女の話を聞きながら鼻をほじっていても分からなくなってしまいますよ？」
……くそ、一本取られた。
不貞腐れて縁側に足を投げ出した私に松陽は優しく問うた。
「そんなに嫌いですか？その眼」
「……わざと聞いてる？」
嫌いに決まっているだろうが、と眉をしかめる幼い私。しかし松陽は言った。
「私は好きですよ、Aの真実を見抜くその曇りのない眼が……」
見上げた柔らかい笑顔に私は溜息を吐く。
「子供相手に何言ってんだか」
「相変わらず手厳しいですね……」
困ったような表情の松陽を他所に、私は庭で取っ組み合いを始める銀時と晋助を傍観していた。
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ギラッフェ(プロフ) - からちぇさん» コメントありがとうございます！とっても嬉しいです！これからも応援お願いします！ (2020年9月11日 22時) (
レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
からちぇ - ドストライクな作品でした！めちゃくちゃ好きです (2020年9月10日 19時) (レス) id: b750728265 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 今井月華さん» コメントありがとうございます！ちょっと気を抜くとすぐ体調崩しちゃいますからね、気をつけます。月華さんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ハニーさん» ご心配ありがとうございます！これからインフルエンザの季節ですし、ハニーさんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
今井月華(プロフ) - お疲れ様です。体調にはお気をつけ下さい^_^ (2018年11月2日 21時) (レス) id: 7d138352b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ギラッフェ
| 作成日時：2018年10月1日 22時
