弐拾捌 ページ37
『ここから、逃げなさい。
遠くへ行きなさい。先生のことはもう忘れなさい。お前の今日までの全てを、ここに置いて。』
これは、夢だ。あの日の記憶。
辺り一面、炎で囲まれている。
唯一の逃げ道も、そろそろ崩れてきそうな瓦礫で危ない。
──いやだ、絶対に嫌だ。
先生を置いていくなんて、そんなことできない!
2人で逃げよう、ねぇ、先生…!
『よく聞きなさい。
先生は、俺はもう長くない。
このままでは、二人とも死んでしまう』
──死なないよ、だって僕、
『お前は人間だよ。
俺の子だ。俺の傷はもう、塞がらない。
塞がる前に死んでしまう。
お前だけでも逃げるんだ。』
僕の手を、先生の血にまみれた腹に当てた。
暖かな液体が、掌いっぱいにこびりつく。
押さえても押さえても、血は止まらない。
先生の命が流れ出しているようだった。
『お前は頭のいい子だ。
分かるだろう、もうどうすればいいか』
──嫌だ、嫌だよぅ、先生、1人にしないで…
先生は、笑った。
それから、幼子を扱うように、そっと、そっと僕の頬に触れた。
『俺はずっとお前のそばにいる。
ただ、見えないだけ。
ずっと、ずっと、そばにいるから。』
先生は、そう言うと僕に無理矢理自分の刀を持たせて、突き飛ばした。
触れるだけのような、力無く、弱々しい、先生の最後の力。
『ッ、行きなさい!!!
森を抜けて、山を抜けるまで、決して振り返るな!!早く!!』
今までにない、先生の厳しい目。
でも先生ってば馬鹿だよ。
厳しい目になりきれてない。
先生の瞳には、焦りと、悲しみと、大きな慈しみを感じた。
離れ難くて、立ってからもまだ先生を助けられる方法を探して立ちすくんでいると、先生は焦れったそうに瓦礫の石を僕の足元に投げた。
『行け!!これ以上ここに残るようであれば、お前はもう俺の子じゃない!』
先生は必死に石を投げた。
血反吐を吐きちはしながら。
先生も僕も、涙が止まらなかった。
僕は先生に踵を返すと、前に前に走り出した。
先生がいつも教えてくれたみたいに。
『お前は、ひとりじゃない…
いつか、絶対に、お前を助けてくれる人は現れるから…ひとりじゃないさ、』
『ずっと、そばで…守って、やれなくて、ごめん、な…』
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ハナ(プロフ) - 神崎舞さん、大変失礼しました。直ぐに直させていただきます!教えていただきありがとうございました! (2019年9月12日 23時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
神崎舞(プロフ) - 染のページ名前変換出来てませんよ。 (2019年9月12日 23時) (レス) id: 09069055ff (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 飴季さん、コメントありがとうございます!!複雑な設定なのもあり、描写は特に気をつけていますので、褒めていただいて本当に嬉しいです!!拙い部分もありますが、これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします!! (2019年9月12日 22時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
飴李(プロフ) - 描写がわかりやすく、とても面白いです!過去や、6つの力、炭治郎との関わり方等、更新楽しみにお待ちしてます。応援してます! (2019年9月12日 22時) (レス) id: 3704481379 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - kitunetuki_040さん、教えていただいてありがとうございます!早急に直します! (2019年9月11日 0時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年8月24日 22時