弐拾陸 ページ34
痛みを感じないが、苦しいは感じ取れるA。
思うように呼吸の出来ない苦しさに、瞳には生理的な涙が滲む。
だめだ、このままでは炭治郎を心配させてしまうだけだ。
「た、炭治郎、ごめん、今日は、話せそうにないや」
やっとの思いで声を出せた。
心配させまいと、無理に笑顔を作って貼り付けた。
こういうのは得意だ。
笑いたくもないのに笑うのも慣れてしまった。
「A、」
「寒いなぁ、冬だもんね、そりゃそうか。早く布団に入ろう、もう随分気分転換になったしさ。炭治郎、話に付き合ってくれてありがとう」
炭治郎の言葉を遮り、無理に話を切り上げた。
早歩きで部屋の中に入ると、布団に潜り込む。
炭治郎はまだ何か言いたげだったが、もう無理だ。
何も、聞きたくない。
今日は、今は、まだ…。
自分が思っていた以上に緊張していたのだろう、体が強ばっていて驚いた。
肩の力を抜いて、息を吐く。
長く長く、肺から絞り出すように。
──お前なんて、産まなければ良かった──
──お前ほど誰にも望まれない人間は
居ないだろうね──
心の底から自分を憎み、怨むあの人の声が聞こえた。
違う、あの人は死んだ。
自分が殺した。
これは幻聴だ。
でも、今確かに耳元で囁いたのだ。
…母親が。
耳を急いで塞ぎ、体を丸める。
次第に体がガタガタと震えだす。
耳を塞いでいるのに、母親の声が、息がなおも耳にかかるような錯覚を覚えた。
うるさい、静かにしてくれ。
殺したのにいつまでも僕の中に居るな。
出ていけ、忘れろ忘れろ、忘れろ…!
その時、そっと布団の上から誰かの手が触れた。
優しく、布団の上から伝わる暖かなその手は、トントンとまるで幼子をあやす様に背を優しく叩いた。
それと同時に猛烈な眠気に襲われ、
瞼がうつらうつらと落ち、深い眠りに落ちる。
あれほどうるさかった母親の声は、
なぜだろう、もう聞こえてこなかった。
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ハナ(プロフ) - 神崎舞さん、大変失礼しました。直ぐに直させていただきます!教えていただきありがとうございました! (2019年9月12日 23時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
神崎舞(プロフ) - 染のページ名前変換出来てませんよ。 (2019年9月12日 23時) (レス) id: 09069055ff (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 飴季さん、コメントありがとうございます!!複雑な設定なのもあり、描写は特に気をつけていますので、褒めていただいて本当に嬉しいです!!拙い部分もありますが、これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします!! (2019年9月12日 22時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
飴李(プロフ) - 描写がわかりやすく、とても面白いです!過去や、6つの力、炭治郎との関わり方等、更新楽しみにお待ちしてます。応援してます! (2019年9月12日 22時) (レス) id: 3704481379 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - kitunetuki_040さん、教えていただいてありがとうございます!早急に直します! (2019年9月11日 0時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年8月24日 22時