弐拾伍 ページ33
「Aの家族のことを教えてくれないか?」
「えっ」
背中を冷たいものが流れる。
一気に湯冷めした気分だ。
僕の心のまだジュクジュクと膿んだ部分を、指でかき混ぜるように、急に心が冷たくなるのを感じた。
それとは逆に、頭は熱暴走したみたいに熱い。
なんとか、平静を装わないと、何か心の糸が切れそうだった。
「あ、えーと、前も言ったみたいに、両親は生まれた時に死んでしまっていて、それで、」
「その事でな、違ったらいいんだが…何かそれについて嘘をついていないか」
なにか、なにか喋らないと、と思い、上手く回らなくなった呂律を懸命に回してみたものの、炭治郎は自分の苦し紛れの言い訳をバサッと切り捨てた。
尋常ではない冷や汗が身体中から流れる。
どうして、嘘だと、思ったんだ。
それも、かなり確信を持って嘘だと見抜いている。
なぜ…
「なんで、嘘って」
「俺は鼻がいいから、匂いで嘘とか分かるんだ」
炭治郎は、凄いだろって笑ったけど、その言葉に僕はもうなんて答えたらいいか、分からなかった。
朦朧とした頭は、思い出したくもない過去をフラッシュバックさせた。
…まだ、アイツらの呪縛が解けていないんだ。
母親の、いや母親とも呼べるものでは無い奴の顔ばかりが頭の中に溢れ出す。
怖い、怖い怖い。
…寒い。
でも炭治郎だって勇気をだして禰豆子ちゃんのことを話してくれたんだ、ここで自分だけ話さない訳には…
「A?顔色が悪いが大丈夫か?あんまりにも話しにくいのなら…」
「りょ、両親の、こと、なんだけど」
炭治郎はかなり不味い事を聞いたかもしれないと後悔した。
暗い中でも分かるほど、明らかにAの顔色が変わったのだ。
先程までの笑顔が消えた。その笑顔すら、する余裕がなくなったのだろう。
呼吸は乱れ、肩で息をしている。
匂いは酷く怯えた、こちら側が鳥肌が立つほどの恐怖の匂いに辺り一体が包まれる。
「あ、あぁ」
「僕、父さんと、母さんに」
辛く苦しい日々
死ぬことすら許されない
来るはずもない誰かに期待し、殺されることを夢見た日々
(言え、言わなきゃ…言え、言え言え!!!)
言わなければ、と思うほどに、不思議と喉が締まっていく。
舌が上手く回らず、言葉が出ない上に、声を出そうとしても息が漏れるだけ。
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ハナ(プロフ) - 神崎舞さん、大変失礼しました。直ぐに直させていただきます!教えていただきありがとうございました! (2019年9月12日 23時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
神崎舞(プロフ) - 染のページ名前変換出来てませんよ。 (2019年9月12日 23時) (レス) id: 09069055ff (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 飴季さん、コメントありがとうございます!!複雑な設定なのもあり、描写は特に気をつけていますので、褒めていただいて本当に嬉しいです!!拙い部分もありますが、これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします!! (2019年9月12日 22時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
飴李(プロフ) - 描写がわかりやすく、とても面白いです!過去や、6つの力、炭治郎との関わり方等、更新楽しみにお待ちしてます。応援してます! (2019年9月12日 22時) (レス) id: 3704481379 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - kitunetuki_040さん、教えていただいてありがとうございます!早急に直します! (2019年9月11日 0時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年8月24日 22時