佰拾陸 ページ26
暇だなぁ
この生活にもだんだん慣れてきた
『今日は雨かぁ』
今日なら傘をさしていても不審がられないし
「少し外、行ってみようかなあ」
.
.
いざ外に出てみると日差しも弱くて助かった
流石に傘無しは駄目そうだけど、ね
「外でたのも久しぶりだし、この辺りを適当に散歩でもして帰ろ」
遊郭とはやっぱり全く違くて
吉原のような豪華な華々しさはないけど素朴な街の人の温かみを感じた
あ、最近は安定してご飯も食べれているから怪我人がいない限り人を襲うことは…、多分ないだろう
あ、あのお団子屋さんの看板……
胡蝶さんが買ってきてくれたお団子のお店だ
まぁ、食べられなかったからそのまま飾ってるんだけどね
少しお店(の外側だけでも)、見てみようかな
私はそう思い、そのお団子屋さんに向かって歩いた
.
.
「しつこい(はぁ、なんで僕が……)」
「えぇ〜、そうかなぁ♡ でもぉ、無一郎君とこのお団子屋さんに来れて嬉しいなぁ〜♡」
「話してないで早く食べて(僕、この後また遊郭に行かなきゃいけないのに)」
私があの姿を見間違えるはずがない
私が一番顔を合わせたくなくて、でも本当は一番会いたかった人
『無一郎……』
彼はパッと顔を上げた
私は傘をさしてるから相手からはあまり顔は見えなかっただろう
今、彼が私を見ている
『……っ、』
私は後ろにふり返りその場から歩いて立ち去った
1つ目の角を曲がったところで私は走った
相手は夢子さんだったはず…
無一郎はあの子が好きだったの?
いや、無一郎はあの子が鬼だって知ってる
じゃあ、なんで?
好きな人がいるんじゃなかったの?
いや、この際相手はどうだっていい
苦しい
私は少しでも速くあの空間から逃げ出したかった
『……っ、!!』
道の泥につっかかり転んでしまった
『もう、やだぁ…』
傘も落としてしまった
今は日が完全に隠れているが時間の問題だ
外になんて、出なければよかった
「……A」
ああ、なんて私は単純なのだろう
……彼の声を聞いただけで私は浮かれてしまう
私に話しかけてくれるだけで、喜んでしまう
『早く、帰りな。夢子さんが待ってるよ』
行って欲しくない、一緒にいたい
そんな思いは、見て見ぬふりをする
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凛鵺 - 初コメ失礼します! これまでの作品、全て見ました! …神ですか? これからも応援してます! 現在は初めから書き直しているそうですが更新されたらまた見に行きます! 応援してます! 頑張ってくださいね! (4月24日 21時) (レス) @page22 id: b15fc39926 (このIDを非表示/違反報告)
りさぷー - わお、気になっていつの間にか時間忘れて一気見してたわ、すごいヾ(≧▽≦*)o(語彙力皆無)これからも陰ながら応援していきます!でもどうか無理はなさらず<(_ _)> (4月21日 18時) (レス) @page32 id: f96d0b684d (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - わぁぁ!!お話が面白すぎて全部一気読みしちゃいました!!文才凄すぎて尊敬…!これからも更新頑張って下さい!! (4月11日 16時) (レス) id: e840a98253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:HAL | 作成日時:2024年2月27日 18時