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少女狂想曲 龍騎 浅倉 ページ9

流血注意
色々と人を選ぶ描写があります

************



入口の方から、ガラガラと何かが落ちる音がした。その音は広く静かな廃工場に響き渡り、Aの耳にも届いた。あの人が帰って来たんだな、と彼女は察した。果たして予想通り、浅倉威は彼女のいる部屋へ倒れ込むように入って来た。脇腹辺りを手で押さえ、苦悶の表情を浮かべている。その手には赤い血液が付着していた。


 「あぁ、怪我をしている。可哀想に」


壁にもたれる彼に近付き、傷を隠している手を払い除ける。蛇皮のジャケットを捲ると、傷が露わになった。幅約10センチの刺し傷だった。深さはそれ程でもないので、命に別状はなさそうだ。だとしても、痛そうであるのに変わりはない。


 「痛い? 痛いよね、そうだよね」


未だ血の固まっていないその傷に、彼女は口付けを落とした。そして。


浅「いっ……」


その細い親指で傷を押し、中を抉り出すように動かした。傷口からまた鮮血が溢れ出し、彼女の指を伝う。浅倉は唸り声を上げ、額に脂汗を浮かべた。


 「痛いねぇ」


顔に張り付いた髪を払ってやりながら、彼女はそれでも手を止めない。おもちゃを貰った子供のように、傷口をほじくったり血を押し出したりして弄んだ。

浅倉が痛みに声を漏らす度、彼女は興奮した。彼の痛みに共感しながら、それでも手を止めない。その興奮が最高潮に達したとき、徐にポケットから折り畳み式ナイフを取り出し、勢い良く、自身の脇腹に刃を突き立てた。浅倉の怪我と丁度同じ位置である。彼女はその痛みに顔を歪めた。


 「痛いね、これが、貴方の痛み」


グッ、と自分の傷を指で押し、浅倉の傷も同時に押し込む。


浅「う、がぁぁ……」

 「っつぅ……」


呻き声が重なった。ひどく静かなその部屋は、二人の血で真っ赤に染まっていた。


 「これは、私の痛み。私の……」

プリーズ・プリーズ・ミー ガッチャード 錆丸→←汝は罪ありき モルフォーニャ キングオ



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設定タグ:特撮 , 短編集
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鶴葉 - いづみ様の好みにあった設定だったようで嬉しいです! ありがとうございます。 楽しみにお待ちしております! (3月23日 23時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 鶴葉さん» 返信ありがとうございます! 好きな感じの設定なのでちょっとニヤニヤしてしまいました。今書いている話が終わったらすぐ書き始めますね! 少々お待ちください。 (3月21日 0時) (レス) id: dd0d1755d5 (このIDを非表示/違反報告)
鶴葉 - それ以降、スタークは主に付きまとわれるようになる。面倒だと思いながらも主の事を始末しようとしない自分自身に苛立つスターク。(感情が無いためこの気持ちがどういうものか分からない。)」 というのはどうでしょうか…? 主は明るくてお転婆な感じだと嬉しいです…! (3月21日 0時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
鶴葉 - ご返信、リクエストの受付ありがとうございます! お返事が遅くなり申し訳ございません…! 設定は「自分にとって不要になったスマッシュを倒しただけのスターク。そのスマッシュに襲われていた主は助けてくれたと勘違いして好きになってしまう。→続きます。 (3月21日 0時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 鶴葉さん» リクエストありがとうございます!感想もとても嬉しいです!何か設定などにご希望はございますか? (3月17日 23時) (レス) @page22 id: dd0d1755d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いづみ | 作成日時:2023年7月17日 22時

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