AIコトバ ゼロワン 亡 ページ25
亡が頭を悩ませているのを、Aは感情の読めない顔で見詰めていた。好き嫌いがないと言う彼女に感情があるのかは不明だが。
どんなに亡が返答に迷い、困っていても、彼女にしてみれば対した質問ではないのだ。目に付いた景色をありのまま言葉にするように、ふと浮かんだ考えをそのまま言っているだけだ。真面目に付き合う必要はない。
ただ、一つだけ言えることがある。Aの見解には決定的な見落としがあった。
亡「あなたも誰かに嫌なことを言われたり、されたりすることはあるでしょう。しかし、だからと言って人間全員を嫌いになることはありませんよね」
「それはそうね」
亡「その人間個人に対して害を与えるヒューマギアがいたとしても、人類全体に叛逆するヒューマギアが生まれることはないと言い切れます……アークが復活しない限りは」
「最後、尻窄みになったわね」
Aはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
この笑い方に良い思い出はない。亡は無理矢理話題を変えた。
亡「まだ帰らなくて良いのですか? もう7時になりますが」
「大丈夫」
亡「お父様が心配しているのでは。毎日遅い時間に帰っているでしょう」
「そんな訳ないわ」
亡「それは」
どういう意味ですか、と口をつきかけて、亡はグッと堪えた。彼女は何故か、決して自分のパーソナルな話をしない。唯一、先日父親のことを少し話しただけで、後は馬鹿馬鹿しく、他愛のない話を繰り返すばかりだ。
相手が自分だからだろうか、と亡はこういう場面に遭遇する度に少しだけショックを受ける。ほんの短時間会話するだけのヒューマギアに個人情報を明け渡さないのは正しいことなのだろう。だが、これだけ色々な話をしているというのに、未だに彼女のことを知れていない気がする。彼女が亡のことを知りたいと思うのと同じか、或いはそれ以上に、亡はAのことを知りたくて仕方がない。だから手を変え品を変え質問方法を探っているというのに、どんなに会話を繰り返しても、彼女との関係は平行線を辿るのみのように感じる。
亡が黙ったままでいると、Aはふと微笑んだ。先程とは趣の違う笑みだ。
「私、あなたともっとずっと一緒にいたいわ」
亡「勘違いしそうになる。あなたがそんなことを言うと」
「良いんじゃない? 勘違いしても。踊らされる方が人生楽しいわよ」
亡「踊らせる側のあなたも大概楽しそうですね」
亡は肩を竦める。ずっと一緒にいたいなど、好き嫌いを言わない彼女にしてみれば最大限の賛辞だ。こんなに回りくどく、分かりにくい褒め言葉があるだろうか。
「私の話をちゃんと聞いてくれるのは、あなたくらいなものよ」
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鶴葉 - いづみ様の好みにあった設定だったようで嬉しいです! ありがとうございます。 楽しみにお待ちしております! (3月23日 23時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 鶴葉さん» 返信ありがとうございます! 好きな感じの設定なのでちょっとニヤニヤしてしまいました。今書いている話が終わったらすぐ書き始めますね! 少々お待ちください。 (3月21日 0時) (レス) id: dd0d1755d5 (このIDを非表示/違反報告)
鶴葉 - それ以降、スタークは主に付きまとわれるようになる。面倒だと思いながらも主の事を始末しようとしない自分自身に苛立つスターク。(感情が無いためこの気持ちがどういうものか分からない。)」 というのはどうでしょうか…? 主は明るくてお転婆な感じだと嬉しいです…! (3月21日 0時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
鶴葉 - ご返信、リクエストの受付ありがとうございます! お返事が遅くなり申し訳ございません…! 設定は「自分にとって不要になったスマッシュを倒しただけのスターク。そのスマッシュに襲われていた主は助けてくれたと勘違いして好きになってしまう。→続きます。 (3月21日 0時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 鶴葉さん» リクエストありがとうございます!感想もとても嬉しいです!何か設定などにご希望はございますか? (3月17日 23時) (レス) @page22 id: dd0d1755d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いづみ | 作成日時:2023年7月17日 22時