AIコトバ ゼロワン 亡 ページ24
某日。二人は河川敷に並んで座っていた。その日はもう10月も終わりかけだというのに妙に蒸し暑かった。夕日は地平線にその姿の殆どを隠れているにも関わらず、残暑が空気中を漂い、亡の体内機器の温度を上昇させている。体温調節機能が搭載されている為熱を持ち過ぎることはないが、その所為でエネルギーの消費が激しい。充電が急激な減り方をしている。
隣に座るAをちらと見ると、この暑さにも関わらず、長袖のシャツを第一ボタンまで止めて、腕捲りもせずきっちり着込んでいた。スカートも膝下を保っているし、見た目だけだと真面目な女学生といった風貌だ。先日の中間テストでの一番良い成績は英語の68点と言っていたから、その実そこまで勉強は得意ではないようだが。
何度かAと対話を重ねる内、亡は何となく、彼女との会話方法を掴みかけていた。例えばパン派か米派かを聞きたいとき、そのまま好き嫌いを尋ねるとはぐらかされてしまう。だから、こう聞くのだ。ご飯とパン、どちらを食べることが多いですか、と。
「そうね、父がいるときはご飯だけど、学校での昼食はパンが多いわね。手軽だし、温めなくてもそのまま食べられるし」
亡「良く購入するパンは何ですか」
「あんぱん、かしら」
亡「つぶあんとこしあんはどちらを?」
「敢えて言うならこしあん。白あんがあればそちらを選ぶけど、なかなか見かけないのよね」
彼女の好物は白あんのあんぱん、と亡はメモリに記憶する。
「そういえば、貴方は何のヒューマギアなの?」
ふとAが尋ねる。思い付きというより事前に準備していたようだった。
出会ってそこそこ経つが、まだ話していなかった。というより、最近彼女は亡について色々と尋ねるようになった。知りたいと言っていたのは本当だったらしい。
亡「私はシステムエンジニアです。ヒューマギアの開発や修理にも携わっています」
「ヒューマギアがヒューマギアを作るの? 何だか怖いわね、それ。例えば作る側のヒューマギアが人間を憎んでいたとしたら、人間を憎むヒューマギアを生み出すかもしれないのよね。そこから戦争に発展するかも」
亡「SFの読み過ぎです。以前はアークによる干渉で人類滅亡を遂行しようとする者もいましたが、今はそういうこともなくなりました」
「でも酷い人間はいるでしょう? そういう人に対して、殴ってやりたいとか思わないの?」
亡はグ、と喉の奥で言葉を詰まらせた。そう問われると、何も言えなくなる。嫌な目に遭うことはゼロではない。シンギュラリティに到達した者はそれに対して、怒りや憎しみ、悲しみの感情を覚えるだろう。そこから手を下さないとも限らない。
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鶴葉 - いづみ様の好みにあった設定だったようで嬉しいです! ありがとうございます。 楽しみにお待ちしております! (3月23日 23時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 鶴葉さん» 返信ありがとうございます! 好きな感じの設定なのでちょっとニヤニヤしてしまいました。今書いている話が終わったらすぐ書き始めますね! 少々お待ちください。 (3月21日 0時) (レス) id: dd0d1755d5 (このIDを非表示/違反報告)
鶴葉 - それ以降、スタークは主に付きまとわれるようになる。面倒だと思いながらも主の事を始末しようとしない自分自身に苛立つスターク。(感情が無いためこの気持ちがどういうものか分からない。)」 というのはどうでしょうか…? 主は明るくてお転婆な感じだと嬉しいです…! (3月21日 0時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
鶴葉 - ご返信、リクエストの受付ありがとうございます! お返事が遅くなり申し訳ございません…! 設定は「自分にとって不要になったスマッシュを倒しただけのスターク。そのスマッシュに襲われていた主は助けてくれたと勘違いして好きになってしまう。→続きます。 (3月21日 0時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 鶴葉さん» リクエストありがとうございます!感想もとても嬉しいです!何か設定などにご希望はございますか? (3月17日 23時) (レス) @page22 id: dd0d1755d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いづみ | 作成日時:2023年7月17日 22時