AIコトバ ゼロワン 亡 ページ21
彼女は変わっていた。
その人はAと名乗った。
仕事を片付けA.I.M.S.に戻る途中、亡は一人の女性が河川敷に座り込んでいるのを目にした。秋も深まる季節、夜7時にもなるとすっかり辺りは暗く、気候も冷え込んでいた。歳の頃は17.18くらいに見えた。若い女性が夜一人で外出しているのはいかがなものだろうか。
人はこれをお節介と言うのだろうが、どうしても何も言わずに通り過ぎることはできず、亡は少女に話しかけた
亡「どうしたんですか、こんなところで。危ないですよ」
彼女はくるりと振り返り、思いがけない笑顔でこう言った。
「私の話し相手になってくれない?」
彼女は多弁だった。大人しそうな見た目と反して、良く喋る人だった。しかも下手くそな翻訳機か壊れた人工知能のようなことばかり言う。耄碌しているとしか思えないが、どうやら正気らしかった。
例えば、こうだ。
「クリームパンに入っているクリームって殆どカスタードクリームよね。あれ何故なのかしら。クリームって言われたら大概の人はあの白いホイップクリームを想像するでしょ? あ、調べてみたんだけど、生クリームはタンパク質を分離させて作るのに対してカスタードクリームやバタークリームは卵とか色々材料を混ぜ合わせて作るんですって。つまり生クリームが仲間外れなの」
亡「……貴女は生クリームが好きなんですか?」
「別に。気になっただけ。クリームパンはよく食べるわよ」
このように、脈絡のない話をただつらつらと語り続けるのだ。亡はヒューマギアだから特に苦痛などは感じないが、人間だったら呆れて頭がおかしくなってしまっていたかもしれない。
「皆、私のこと頭がおかしい人だと思っているの。生まれてこの方友達なんていたことがないし、父親にも嫌われているし」
亡「だとしても、もう家に帰るべきです。こんな時間に外にいたら危ないですから。きっとご家族も心配しています」
「そうかしら」
と言ってAはそっぽを向いた。左手で雑草をむしっては投げ捨てているのは無意識だろうか。
亡「Aもお父さんのことが嫌いなんですか」
「うーん、そもそも好き嫌いがあまりないのよね、私」
亡「は?」
「好きとか嫌いとか、寂しいとか嬉しいとか、そういう言葉が好きじゃない。あ、今好きって言っちゃった。まぁ、そういうことよ。だって、玉ねぎが嫌いなのと戦争が嫌いなのって言葉の度合いが違うでしょ? なのに一緒くたに『嫌い』って言いたくないのよ」
亡は話の流れが掴めず思考がフリーズしたが、彼女は何故かすっきりしたらしい。爽やかな笑顔でこう言った。
「また明日もお話ししましょうよ」
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鶴葉 - いづみ様の好みにあった設定だったようで嬉しいです! ありがとうございます。 楽しみにお待ちしております! (3月23日 23時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 鶴葉さん» 返信ありがとうございます! 好きな感じの設定なのでちょっとニヤニヤしてしまいました。今書いている話が終わったらすぐ書き始めますね! 少々お待ちください。 (3月21日 0時) (レス) id: dd0d1755d5 (このIDを非表示/違反報告)
鶴葉 - それ以降、スタークは主に付きまとわれるようになる。面倒だと思いながらも主の事を始末しようとしない自分自身に苛立つスターク。(感情が無いためこの気持ちがどういうものか分からない。)」 というのはどうでしょうか…? 主は明るくてお転婆な感じだと嬉しいです…! (3月21日 0時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
鶴葉 - ご返信、リクエストの受付ありがとうございます! お返事が遅くなり申し訳ございません…! 設定は「自分にとって不要になったスマッシュを倒しただけのスターク。そのスマッシュに襲われていた主は助けてくれたと勘違いして好きになってしまう。→続きます。 (3月21日 0時) (レス) id: 547353d65f (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 鶴葉さん» リクエストありがとうございます!感想もとても嬉しいです!何か設定などにご希望はございますか? (3月17日 23時) (レス) @page22 id: dd0d1755d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いづみ | 作成日時:2023年7月17日 22時