【特撮】はるかかなたの【短編集】

ダンスデカダンス ギーツ 道長 ページ19

ギーツ・ガッチャード冬映画のネタバレが含まれます。

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道長とAは焼肉を食べに来ていた。お互い金がないので激安食べ放題チェーン店だ。幼馴染なので勿論割り勘である。
道長の前のカルビやロースは、代わる代わる焼かれては彼の腹の中に吸い込まれている。一方Aの前では鶏肉が育てられていて、本人は箸休めのナムルを摘んでいた。


　「今の話、本当？」

道「嘘言ってどうする。俺が仮面ライダーなの知ってるだろ」

　「いやそっちじゃなくて。夢の世界の方」

道「あぁ、肉食った話か。もう少し閉じこもっとけば良かったな」

　「ふざけるなって。お前の話だと、女の子は王子様捕まえて幸せな結婚？ で、もう一人は警察官が夢ってことだよね？」

道「あぁ。らしいな」


道長がそう言うと、Aは深く溜め息を吐いてテーブルに肘をついた。金網の上の肉はもう暫く火を通す必要がありそうだ。


　「お前、夢とかないの？」

道「だから、美味い肉食うことが」

　「あー言い方が悪かった。将来の夢とかないの？」

道「何だ急に。進路相談かよ」

　「誤魔化すな。他の二人は未来の夢だった。お前は目の前の快楽にしか目がないの？」

道「でも幻のA6ランクの肉だぞ。将来見つかるかもしれないだろ」

　「そんなんないから。お前が馬鹿なだけ」

道「バッ……！？」


彼の肉は既に端の方が黒く固くなっていた。気が逸れているらしい隙を突いてAはこっそりロースを自分の取り皿に置いた。


　「現場系なんだから資格取れば？ 給料上がるよ」

道「勉強は嫌だ。給料だってそれなりに満足してる」

　「それが駄目なんだって。将来の為に貯金は必要だよ？」


Aの言うことは尤もだ。このご時世、老後のことは既に考えておくべきだ。加えて肉体労働なのだから、いつ体が保たなくなるかも分からない。

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