猫に小判 ギーツ 祢音 ページ29
Aとはお嬢様と使用人の子供でありながら、小さい頃から鞍馬の屋敷で一緒に育った。3つ歳上ながら同い年のようであり、頼りになる存在でもあった。
歳を重ねるごとに、Aとの差を実感するようになった。一緒に小学校に通っていたのに、中学、高校では3つという歳の差の壁が2人の間に立ち塞がった。それでも、暫くは友人として親しくできていた。
しかしAが高校を卒業してから、2人の関係は急変した。お嬢様と使用人になったのだ。昔のように軽々しく話すことができなくなった。本人たちが気にしなくても、双方の親がそれを許さなかった。
そして今日、歳や身分だけでなく、物理的な距離も開く。
「ごめんね。最後に祢音と一緒に乾杯したかったんだ」
Aは俯いて栓抜きをくるくると手で回した。良く見ると、後ろのテーブルには2つのワイングラスが用意されている。
祢「……いいよ」
「え?」
祢「でも、一口だけね」
祢音は顔を赤らめて言った。Aはにっこり笑うと、ありがとうと呟いた。
祢音からボトルを受け取ると、Aは手早く栓を抜いた。そして彼女にグラスを持たせ、ワインを注いだ。赤い液体が流れ落ち、グラスに溜まっていく。1/3くらいの量が注がれると、ボトルの口を離し、祢音に飲むように勧めた。
グラスに口を付ける。鼻にアルコール独特の匂いが届いた。ツンとしていて腐ったフルーツみたいなのに、どこか甘ったるい香りだ。思い切ってグラスを傾ける。突き刺さるような辛みと渋みが広がった。口の中が火傷したように熱い。それでもそのまま喉まで流し、ごくりと飲み込んだ。味わったことのない感覚に、思わず涙が滲んだ。そのまま頬に伝った雫を、Aは人差し指で拭ってやった。
喉の奥がツンと痛かった。
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お酒は20歳になってから!
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いづみ(プロフ) - 刻卯さん» 承知しました! (2023年2月28日 15時) (レス) id: c26acdadd4 (このIDを非表示/違反報告)
刻卯(プロフ) - いづみさん» 敵同士なのに好きになっちゃった的な設定でお願いしたいのですが難しいかったら甘めのお話をお願いします。 (2023年2月28日 7時) (レス) id: e20218d379 (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 刻卯さん» コメントありがとうございます!リクエスト了解しました!何かご希望の設定や展開はございませんか? (2023年2月27日 21時) (レス) id: 28595e5e52 (このIDを非表示/違反報告)
刻卯(プロフ) - はじめまして!リクエスト失礼します。ギーツでキューンくんを書けたらで構いませんのでお願いします。 (2023年2月27日 16時) (レス) id: e20218d379 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いづみ | 作成日時:2022年12月2日 22時