骸 ページ47
第3の課題がもうすぐ始まる。
成す術もなく、とうとうこの日になってしまった。
私は、セドリックが無事その姿を再び見せるまで、安心することはないだろう。
「そこまで心配か？迷路の外では何人もの先生が見回るんだぞ、大事になりようがないじゃないか」
「でも、確かにあの夢は本物よ。…わかるの」
魔法使いの”カン”に、気のせいはない。
「生きとし生けるものは、生まれ落ちた瞬間から、死亡率100%なのよ。…何を言われても、私は案ずるのをやめないわ」
ドラコは呆れてため息をついたが、優しく背中を撫でてくれた。
合図とともに、代表選手は迷路へと入っていく。
一瞬振り向いたセドリックの背中も、薄暗闇の中へ消えていく。
生き物のようにうねる生垣が入口を消し、重たい霧が彼らの視界を塞いだ。
私は、漠然としていながらも体を押し潰しそうなほど強い不安を抱え、途方に暮れてセドリックが消えた場所を見つめていた。
観客席からは迷路の中が何も見えず、時折火花が見えたり、なにかの唸り声が聞こえるのを固唾を飲んで見守るしかなかった。
十数年後、私はこの時のことを強く後悔する。
呪いをかけるなりして妨害をしていれば、一生恨まれても1人の命を救えたのかと。
確かに起きていた前触れを察知していれば、何かが変わったのかと。
だが、後悔は先に立たない。
我々はいつも、起こってからそれが悲劇だと気づくのだ。
ぐにゃ、と、ゴム人形のように力の抜けた体躯は芝生に顔を填め、濁った瞳は二度と光を映さない。
涙、嗚咽、…困惑、悲哀、後悔……確かな絶望。
状況がわかっていない人も多くいた。
しかし、ハリーとエイモス・ディゴリーが流す涙が、その事態を物語っていた。
セドリック・ディゴリーは死んだ。
あの、悪夢のとおりに。
「…だから言ったのに、私、私は」
「…ああ」
ドラコはただ静かに私を抱きしめる。
涙でローブがぐしゃぐしゃになっても、それでも私を撫でるのをやめない。
それだけが救いだった。
「私が、もっと止めていれば。もっと、セドリックを」
「……ああ」
忘れられない。
目の裏にこびりついたように、忘れられない。
迷路に入る時、セドリックは笑顔で私を見て、「心配しないで」と口を動かした。
未来を信じて疑わない、星のように眩い光を、私は生涯忘れることはなかった。
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アキラ(プロフ) - でぃあさん» そう言って頂きとても嬉しいです、ありがとうございます！出来る限り毎日投稿頑張ってます、楽しんで頂けたら幸いです。 (2020年5月10日 2時) (
レス) id: bba48d4b5f (このIDを非表示/違反報告)
でぃあ(プロフ) - コメント失礼致します！今まで読んだドラコの小説の中で1番好きです、、。大変だとは思いますが、更新心待ちにしております！！ (2020年5月10日 1時) (レス) id: 9634e00201 (このIDを非表示/違反報告)
アキラ(プロフ) - ライキさん» ありがとうございます。炎のゴブレットは好きな巻なので、原作に泥を塗らないように頑張ります (2020年4月19日 1時) (レス) id: bba48d4b5f (このIDを非表示/違反報告)
ライキ(プロフ) - すっごく面白いです！頑張ってください！ (2020年4月18日 18時) (レス) id: 6dfa20d2dd (このIDを非表示/違反報告)
アキラ(プロフ) - 黒猫王さん» ありがとうございます！これからもよろしくお願い致します。 (2020年4月13日 17時) (レス) id: bba48d4b5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アキラ | 作成日時：2020年4月13日 1時
