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魔法史の授業でグリムが睡魔に勝てず、トレイン先生に連帯責任としてお小言をもらった。
エース、デュースには見捨てられ、グリムは途中で脱走し、結局倍に増したお小言を、監督生一人で昼休みいっぱい聞かなければならなくなった。
監督責任者としての自覚を、中途半端な気持ちでいては痛い目を見る。
ごもっともなことばかりではある。
ためたわずかなお金はグリムのツナ缶代に消えていく。
エースとデュースは優しいが振り回されることが多く、疲労がたまる。
いろいろな事情で監督生はひどく精神的に疲れていた。
ただでさえ金欠で、食事をまともに摂取できないのに、グリムが逃げたおかげで、唯一保証されている昼食すら食べられない。
疲れていた。様々なことがどうでもいいと思えるようになるまでに疲れていた。
せめて静かなところで、だれにも邪魔されない一人の時間が欲しかった。
ぼうっとしたきもちで授業に出て、グリムがオンボロ寮に向かったのを確認してから校舎内をさ迷い歩いた。
ナイトレイブンカレッジの敷地は広い。校舎には中庭もあった。
とぼとぼと行く当てなく歩いた監督生は、いつの間にやら人気の少ない中庭へと足を踏み入れていた。
中心に立つ大きな木。
西から差す陽光に葉が照らされて地面に長く影を作っている。
根元にそっと腰を下ろして、監督生はやっと一息つくことができた。
「……疲れた」
無意識に口にしていた心の奥底の感情。
「あの」
芝生が風で小さな音を立てる。
「すみません」
遠くに鳥の声が聞こえた。
「聞こえてないんですか」
元の世界に変える手段は、本当に見つかるのだろうか。
「オンボロ寮の監督生さん。いい加減無視するのやめていただけませんか」
突如として自然から突き放された。
声のしたほうを向けば、一人の男子生徒が立っていた。腕章は、青と黒。イグニハイド寮の生徒だ。
重めの色をしたストレートの髪。眠いのか伏せがちの睫から、ブラックオニキスの虹彩がのぞく。
今まで関わってきた生徒よりも、ずいぶんと目に優しい色合いの男だと思った。
同時に、きれいな人だ、とも。
「これ、校舎内に落ちていましたよ。監督生さんのものでしょう」
白く細い手が差し出したのは、監督生のハンカチだった。
「ありがとう、ございます」
では、と言って去っていった男の背中から、不思議と目を離すことができないでいた。
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ミム - とっても好きです!更新楽しみにしてます。 (2020年6月13日 5時) (
レス) id: 1979fc8c23 (このIDを非表示/違反報告)
pokettoame(プロフ) - 好きです！次の更新楽しみに待ってます！ (2020年5月30日 22時) (レス) id: 2f9884d86e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マイナー道 | 作成日時：2020年5月25日 22時
