演目『祝砲☆はっぴーえんど！』 ページ30
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「……A。少し、相談があるのだが」
屋上。次のショーの本読みをしていたところ、ふいに司がそう切り出した。
持っていた台本をちょっと下げて、彼を見る。
一体なんだ、藪から棒に。
「お前が相談とか珍しいな。いいぜ、このA様にどーんと任せろ。お前にはデカい借りがあるし」
「あぁ、助かる」
そう言って頬を緩めた後、彼はまたすぐに思い詰めた様な表情を見せた。どうやら相当、深刻な悩みらしい。自然と背筋が伸びる。
「――実は、オレはとある人に恋、をしていてな、つまり端的に言えば恋愛相談なんだが」
「へー。……ん？」
生まれて初めて、自分はもしかして難聴なのかもしれないと思った。それか頭が馬鹿になったか。どっちだ。
こいって、言ってた。コイ、濃い、故意、鯉。おかしいなあ、どれも違う。
多分、文脈的には、恋。そうだな、それだ。ぴんぽんぴんぽん、大正解。俺はまだ正気。
…………恋！？
「思うに、相手はオレのことを全くといいほど意識していない様子で」
「おいおいおいちょっと待て。お前が？ 恋ぃ？？ 冗談は休み休み言ってくれよ。それともアレか、また類に何かされたのか」
割と本気で心配になって聞くと、司はジトっとした視線を寄越してきた。
「お前、失礼だな……オレだって恋愛の一つや二つくらいするぞ？ まあ初恋だが……取り敢えず話の続きだ。聞いた話によれば、お前、そういった類の相談は手慣れているらしいな。そこで、Aはどう思う？ 具体的には、オレはどうすれば意識してもらえるようになるんだ？」
「どうって……えぇ、あの司が恋かぁ……待て、お相手は？ 寧々？ えむ？ それともまさか、妹さんの友達とか？」
「……まぁ、そんなところだ」
なんとも言えない顔をして彼は肩をすくめた。
ああそっか、思わずがっついちゃったけど流石に言いたくはないよな。これ以上は聞かないでおいてやろう。
「んーまぁ、とりあえずデートだ。言うまでもないが二人きりでだからな？ お前の性格だったらいつも以上に積極的じゃないと相手も気づかねぇだろうから」
「デート……あっそうだ」
すると司は徐に己のポケットの中をまさぐり始め、やがて取り出したのが、小さな紙切れ。それを司は何を考えているのかはい、と俺に差し出した。
それを見て、司を見て、またそれを見る。
いや、なんで俺なんだよ。
「んだこれ」
「鳳グループと提携している遊園地のペアチケットだ。この前えむから貰った」
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