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一通り話し終えて、でもなんだか聞き手の反応が悪くて。おいちゃんと聞いてたのかよ、と言おうとしたけど、それよりも先に彼がぽつりと溢した。
「…………大変、だったな」
たったそれだけの言葉だが、その音数には見合わない程の重さを感じた。それは憐れみでも、同情でもない。俺は思わず司を凝視した。
自分のことでもないのに、なんでったって、そんな悲しそうな顔をするんだ。
「いや、そんな言うほどじゃ」
「その時オレが側にいてやれたら、お前も少しは気が楽になっていたのだろうか」
「え？」
何を言っているんだと聞く前に、極々自然に伸びた司の手がするんと頬を包んだ。まるで繊細な硝子細工でも触るかのように。
――どっくん。
「今からではもう遅いだろうが……辛い事があってももう、一人で悩まなくていいんだぞ。これからは仲間を……オレを、頼っても、いや、頼ってくれ」
「いや、あの」
「Aが傷付くと、オレも痛いから」
なんだそれ。なんだそれ！
さっきから胸の辺りがざわざわと荒立っている。気温は大したことないはずなのに無性に体が熱くなって、視界に一瞬星が瞬いた。
大慌てになって、それら全てを払拭する。振り切る。払い退ける。
その先に行くと帰れなくなる、気がしたから。
「っ心配、してくれるのはどーも。でも本当にどうってことないし、困った時はちゃんと相談するから」
「ああ、そうしてくれるとありがたい」
「あと前にも言ったよな？ 気安くレディに触るなよ」
「え？ ――あッ、す、すまん！！！ その、ついだな」
そうやって面白いくらいに素早く手を引っ込める彼の姿に思わず笑いが漏れた。本当、いつも行動は大胆なのに全部無意識って、その気になったら女子なんて一瞬で捕まえられそうだよなぁ。
「はは、お前、誰にでもそんなことしてそうだけど危ないからやめろよ。勘違いする子が可哀想だ」
「……勘違い、してくれないから困――」
「やぁ、遅れてしまってすまないねぇ！ もう食べ終わってしまったかい？」
「あ、類。遅かったなー。……ちなみになんだけどさ、火薬ってマジ？」
いつもの柔和な、でも今日はどこか疲れを感じさせる笑みで屋上にやって来た類。
その場で反省文三枚は流石に堪えたよ、なんて全く反省していなさそうなことを言いながら俺たちの隣に腰掛けた。
「それより司くん、僕が来た時何か言いかけてなかったかい？ 邪魔してしまったかな」
「誤魔化すなよ」
「いや、気にしないでくれ、ただの独り言だ！ というか類、お前いい加減に学校で爆破実験するのは控えろと――……」
そうして、とある日のお昼休みはゆるゆると過ぎていった。
演目『落涙☆みっくすあっぷ！』→←演目『代弁☆まいせるふ！』
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