演目『鬼畜☆ぷらくてぃす！』 ページ14
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晴れた空、暖かな日差し。
吹き抜ける風、揺れる木々。
にゃあと鳴く野良猫。
そして。
――飛び交う怒号。
「おい、今のなってねぇぞやり直せ」
「は？ 完璧だっただろふざけんな。どこがダメだってんだよ」
「考えりゃわかんだろ。んな弱々しいロングトーンでよくもステージに立てるな？ オレだったら恥ずかしくて無理だぜ」
「よーしお前表出んぞ」
「ここはもう表ですー残念でしたー。これだからバカの相手は疲れるんだよ」
「てっめぇ！！」
うにゃん、と残して野良猫はびっくりしたように走り去っていった。
目の前の憎き男に殴りかかろうとした所を、慌てたように後ろから羽交締めにされる。
場所は神山高校中庭。
放課後ののほほんとした空気を切り裂くその声は、どこまでも青い空に吸い込まれてなくなった。
「止めんな冬弥！ 今日こそコイツに一発入れなきゃ気がすまねぇ！」
「落ち着け海星、暴力は良くない」
「ほーらすぐに手が出る。少しは名家のお嬢様らしくお淑やかにしてみたらどうなんだよ。あ、お前には無理か」
「彰人、お前いつかぜってぇ泣かす……！！！」
「ハッ、やれるもんならやってみろよ」
小馬鹿にしたような表情で挑発されて、更に頭に血が昇る。ぐいぐいと体を捩ってみるも、後ろの冬弥のせいで全く身動きが取れない。男の女の力の差をこんなに恨めしく思った日はない。
「彰人、お前も煽りすぎだ。そんな言い方しなくてもいいだろう」
「お前どっちの味方なんだよ」
「味方も何もない。ただ争い事は良くないと言っているだけだ。折角海星が頼ってくれたというのに」
「だからコイツがオレに泣きついてきたから扱いてやってんだろ」
「泣きついてない！！」
俺は早々に自分の決断を後悔し始める。後先立たないと言うが、全くもってその通りだ。
そもそもなんでコイツらと一緒にいるのか。理由は極めて単純だ。
俺が歌の稽古をつけてくれと頼んだから。
一念発起して歌でやってくことを決めたはいいが、俺には何年にも渡るブランクがある。使わずに腐り切ってしまったこの技術を誰かに磨いてもらう必要があった。
では誰にそれをしてもらうか。先生(かなり嫌味な奴だ。コイツは本当に許さない)は論外だとして、司達にお願いするわけにもいかない。アイツらだってきっと忙しい。
そこで、ストリートユニットを組んでいる二人のことを思い出して。
「それにしても、お前本当にへったくそになったな」
「いっぺん地獄に堕ちてこいよ」
「海星、口が悪い」
コイツのことなんて思い出さなければよかった。
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