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．
「お前は、間違ってる」
「あ？」
「
なんだそれ。
まるで、まだ俺とショーをするもを諦めていないかのような口ぶり。コイツ、俺の話聞いてたのか？
「うるさい。俺はもう全部止めるって決めたんだ。最初からそうすべきだった」
「いいや、そんなのオレが納得いかない。ショーの借りはショーで返せ」
「お前なぁ。いい加減にしてくれよ。誰もお前が納得いくかなんて聞いてない」
しつこいと一蹴すると、向こうの幻影は押し黙る。
俺の中での踏ん切りはついたはずなのに、何故彼はまだ消えないのだろうか。決心は揺らぐことはないが、相手が相手なだけあって、良心が少し痛む。
「それにオレは、まだお前の歌を聞いてない」
「は……ほんとに何言ってんだ、お前。俺の真ん前にいたじゃないか。特等席で、聞いてたじゃないか。真面目にやって、で、しくって――」
「違う。あれはお前の歌じゃない」
俺が歌ってたのに、俺の歌じゃない？
訳のわからない理屈にいよいよ自分の頭の中が心配になってくる。こんな戯言吐く幻影を生み出すなんて、俺の想い捻じ曲がりすぎだろ。
カーテンが風もないのに揺れ動く。向こうの彼は一息ついてから続けた。
「楽しそうだった」
「え？」
「お前はもっと、楽しそうに歌う奴だった。見てるこっちまでもが歌い出したくなるような……そんな歌を歌ってた！」
楽しそうに、俺が。歌を？
刹那、嫌な衝撃が俺を揺さ振った。
「……な、なんの」
「ようやくわかったんだ。あの時の違和感。何かが違うと……お前はまだ思い出せていない」
がつん。
痛い。頭を、内側から、ハンマーで滅多撃ちにされている。
「思い出せ。海星A。お前の歌を」
がつん。
ああ痛い。脳みそがぐちゃぐちゃにかき混ぜられている。
今までの中で一番鮮明に、映像がちらついた。
「お前の歌う理由はなんだ。歌わない理由はなんだ」
「り、ゆう」
がつん。
あ、ああ、これはなんだ？ 何がこんなに痛い？
俺が歌う理由なんて、そんなものはない。母に言われて、強制されて、仕方がなく。
俺が歌わない理由なんて、数えるほどある。だって俺の喉はもう、壊れて使い物にならないから。
――俺の考えを見透かしたのか。
カーテン越しに天馬は声高々に叫んだ。
「お前は、初めから壊れてなどいない！！」
「ぇ」
ぶわり。セカイが遠のいた。
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