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『昔々、あるところに。音楽を愛する王様が治める国がありました。国民たちもみんな音楽が大好き。街ではどんな時も楽しげな音が聞こえてきます』
柔らかな神代の声に続いて、小さなロボット達がステージ上に現れる。軽快なBGMに合わせて踊り出す個体もあれば、楽器を手にする奴もいる。
観客席のちびっ子は普段目にすることのない機械仕掛けの役者達に釘付けだ。そりゃそうだろう、歌って踊るロボットなんて俺も初めて見たくらいだ。
ぎゅう、と衣装の端を握る。もうすぐ、俺達の番。
「……Aちゃん」
「えむ」
いかにも王族、といったドレスに身を包んだえむが笑って腕を引っ張った。俺を舞台の方へ誘う。
「今回も思いっきり、楽しもうねっ！」
「……あぁ、そうだな。話はそこからだ」
ショーは、俺が一番楽しまなきゃ意味がない。
二人で顔を見合わせて、大きく頷く。そのままくるりと背を向けたえむは打って変わって、しゃんと背筋を伸ばし歩き出す。その後ろ姿はまるで本物の王女様だ。
『参りましょうか』
『ええ。もちろんです』
かつん、と靴音を鳴らしてステージへと踏み出す。
聴衆が見たのは凛とした目の《侍女》だった。
☆
『どうすれば、元のお兄様に戻ってくれるのかしら……昔はあんなにも、音楽が好きだったのに』
物憂げな表情で《王女》が独りごちた。生粋のお兄ちゃんっ子である彼女は、今の《王様》の状態に酷く心を痛めていたのだ。
そもそも、何故《王様》は音楽の全面禁止などという暴挙に出たのか。舞台ではあまり深くまで語られないが、簡単に言えば『音楽が好きすぎる故に嫌いになった』と言うべきか。
『エム様……。では、私が彼の前で歌を歌ってみましょう』
『歌を？ それはどういうこと？』
パッと振り返って、《王女》は期待半分、不思議半分、といった風に聞き返した。彼女の動きに合わせて、ドレスがふわりと宙を舞い、数人の女児が羨望の眼差しでそれを見つめた。
『王に思い出させるのです、歌うことの楽しさを。仮にでも私は宮廷お抱えの歌姫……でしたからね』
《侍女》は元々、国の貧困街に住む小さな靴磨き職人だった。
ある日王国を挙げてお祭りが行われ、客足が増え彼女は仕事中に歌を少しばかり口ずさむほど上機嫌だった。
それがその時の客――お忍びで街を訪れていた《王様》に痛く気に入られ、そのまま宮廷歌手として生きていくことになったのだ。
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ありに(プロフ) - 5年ぶりに夢小説を漁ってたらとんでもない神作品に出会ってしまった…応援してます☺️ (2023年3月10日 19時) (
レス) id: 1064f8688a (このIDを非表示/違反報告)
ただのせかおた - 最初の注意事項とか舞台挨拶（？）みたいな感じで書いてるのめっちゃ素敵です！！お体には気をつけてこれからも頑張ってください💍応援してます！！ (2023年1月21日 23時) (レス) id: 5310fc155c (このIDを非表示/違反報告)
kubota6(プロフ) - この作品めちゃ好きです！応援してます！ (2023年1月10日 23時) (レス) @page17 id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
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