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なかなか止まない拍手喝采に後ろ髪を引かれて、といった様子で四人が帰ってくる。
全員にペットボトルを手渡しながら、労いの言葉をかけた。ちらりと寧々を見る。いつも通りの顔だ。
「はい、お疲れさん。次でラストだっけな」
「そうだね。最後まで気を抜かずに行こう」
それを聞くや否や、えむが勢いよくジャンプした。ジャンプ力やば、絶対身長の倍飛んだだろ今。
「よーっし、時間あるし、あたしちょっとセカっもご、ふがふが!」
突然伸びた手によってその先を聞くことは叶わなかった。えむがびっくりして手の主、天馬を見る。
「あーっ、裏手に回って練習、だろ? えむ」
「……? っあ、そ、そうだったね!! ほら寧々ちゃんも行こっ……って、寧々ちゃん?」
彼女が慌てて振り返った先に寧々はいなかった。
いや、正確には、振り返った目線の先に、だ。
――寧々は、その場にしゃがみ込んでいた。
「っ寧々、大丈夫かい!? やっぱり具合が」
「うるさい……ちょっとめまいがしただけ」
「嘘吐け。お前、やはり風邪を引いているな? 先程の舞台で歌に詰まったのはそのせいか」
「違うって! 私は大丈夫だから!」
そう訴える彼女の顔に冷や汗が滲む。流石にもう無理だ。
でも、寧々がいなくなったら、誰が彼女の代わりを演じるんだ?
「私がダウンしたら、ステージが成り立たない。あと一回だけでしょ。絶対に成功させたいの」
「なんとかならないのか? 類」
「……残念だけど、彼女の言う通りだね。他の人に代役を頼むにしても、時間が足りなさすぎる。かといって、この状態の寧々をステージに立たせるのは不可能……唯一取れる手段は、中止、かな」
そう、神代の言う通りだ。もう遅い。いくら寧々が主張しようと、俺は彼女を立たせたくない。危険だ。
でも、そうしたら、せっかくここまで来たのに、最後の最後で。中止って、そんな形で終わるのか?
誰か。誰かいないのか。練習時間が少なくとも、舞台の質を落とさずに立てる役者が。
考えろ、彼らの役に、少しでも立て――。
「………………ぉ」
「Aちゃん?」
「俺が………………代わりに、やる」
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ありに(プロフ) - 5年ぶりに夢小説を漁ってたらとんでもない神作品に出会ってしまった…応援してます☺️ (2023年3月10日 19時) (レス) id: 1064f8688a (このIDを非表示/違反報告)
ただのせかおた - 最初の注意事項とか舞台挨拶(?)みたいな感じで書いてるのめっちゃ素敵です!!お体には気をつけてこれからも頑張ってください💍応援してます!! (2023年1月21日 23時) (レス) id: 5310fc155c (このIDを非表示/違反報告)
kubota6(プロフ) - この作品めちゃ好きです!応援してます! (2023年1月10日 23時) (レス) @page17 id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
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