＿＿第六幕＿＿ ページ28
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土曜日。フェニックスワンダーランドのゲート前に一人、立ち尽くしていた。他のスタッフ達が通り過ぎていくのを感じたが、やはり俺はそこから一歩も動けそうになかった。
心臓がうるさい。全身の血が倍の速さで巡っているかのような錯覚。
「落ち着け、俺は所詮裏方だ、大丈夫、大丈夫――」
「あ、A。なにしてんの」
「っね、ねね」
振り返って、必死に「いつものA」を作る。公演前にこんな姿見られちゃ、優しいコイツらはきっと俺に休めと言うだろう。そんなことあってたまるか。
寧々と、自分の不安まで誤魔化してしまえるように言った。
「っあれだ、武者震いってやつだよ。あーあ、今回で俺の人気が爆発してお前らの分の出番も掻っ攫っちまうかもなぁ、なんつって」
「なにそれ、そんな簡単に取られるわけないでしょ、もう……ふふ」
寧々が小さく笑うのを見て、体の硬直が少し緩和される。
そうだ、観客の誰も、俺がキャストに加わっていることを知らずに劇を見終わるだろう。彼らが気づくのは、いつもより心なしか増えている演出だけだ。
大丈夫。俺はいける。
「っし、じゃ、ステージに行くとする……っ」
「……A？ って、ちょっと！？ 急に引っ張らないで、待って！」
視界の端に映った人物。それが誰なのか理解した途端、寧々の腕を掴みその場から逃げるように走り出す。
息が乱れるのはきっと走っているからだけではない。走って、走って、奴がいない場所まで――
「Aっ！」
「のあっ！？」
今まで引きづられるように俺の後ろについてきた寧々が急に止まり、引っ張られて転びそうになる。思っていた以上に強い力で寧々の手首を握っていることに気付いた。
「あっ……ご、ごめん、痛かったよな、跡とかできてたら」
「そんなに大したことじゃないから。それよりも、急に何？ 止まってって言っても聞いてくれないし……何かあったの？」
「いや、ちょっと、あの……」
なんと説明すれば良いのかと口籠る。咄嗟だった。別にバレても問題ないはずなのに、体が勝手に逃げ出した。
何も言えない俺をしばらく見つめていた寧々は「ま別にいいけど」と歩き出した。
「誰でも人には言いたくないこととか言えないこととかの一つや二つあるでしょ。私もあるし。だから無理して話さなくてもいいんじゃない？」
「……そう、だ、な」
二人して森の中を行く。
間に流れる静けさが、今は心地が良かった。
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ありに(プロフ) - 5年ぶりに夢小説を漁ってたらとんでもない神作品に出会ってしまった…応援してます☺️ (2023年3月10日 19時) (
レス) id: 1064f8688a (このIDを非表示/違反報告)
ただのせかおた - 最初の注意事項とか舞台挨拶（？）みたいな感じで書いてるのめっちゃ素敵です！！お体には気をつけてこれからも頑張ってください💍応援してます！！ (2023年1月21日 23時) (レス) id: 5310fc155c (このIDを非表示/違反報告)
kubota6(プロフ) - この作品めちゃ好きです！応援してます！ (2023年1月10日 23時) (レス) @page17 id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
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