＿＿ ページ19
．
そんな二人を眺めて、類は笑った。
「ふふ、寧々も満更ではなさそうだ。よかったよ。…………それにしても、司くん」
「なんだ？」
優しげに目を細める司を見て、思わず今まで薄々感じていた疑問をぶつける。
「昨日もそうだけど、君、随分と彼女に固執するね？」
「………………」
司は黙る。類も何も言わない。お互いの足音と、少し先を行く少女二人の笑い声だけがしばらく響いていた。
ふいに司は口を開く。
「昔……ずっとずっと昔。きっともうアイツも覚えていないだろう。……色々あったんだ」
「ふーん……色々、ねぇ」
もうこれ以上は何も語ってくれなさそうだと類は諦め、視線を前方へ向ける。
Aが何か思いついたような顔をして、ちょいちょいと寧々の袖を引っ張る。しばらく何か耳打ちした後、二人してこちらを振り返り、そして、くすくすと笑う。楽しそうだ。
横にいる司の表情をよく観察する。少し寂しそうか？
錬金術師はニヤリと笑う。我等が王様を元気付けてやろう。
「あぁ、僕の司くんがどこの馬の骨とも知れない人に取られてしまうなんて、僕の胸は哀しみで張り裂けてしまいそうだよ……！」
「いつオレはお前のものになったんだ」
☆
「わんだほーい！ Aちゃん、今日からよろしくね！」
「っ、ああ、よろしく、えむ」
衝撃を軽く流し、またすっ飛んできたえむを受け止める。タックル以外の登場の仕方はないのか、コイツ。
昨日を突然すぎて順応できなかったが俺はもともと運動神経がいい方だ。これくらいなら本来難なく受け止められる。
「よし、全員揃ったことだし、だ。早速練習を――」
「いや、待て」
練習開始の号令をかけようとした司を遮る。不思議そうな視線が俺に集まった。ロボットだけは側で全てを見透かしたような目を俺に向けている。
「昨日確かにショーをやると言った。ユニットに入る気もある。だがそれには条件があるぜ」
「条件」
それは今日の朝からずっと考えていたものだった。お互いがいい気持ちで行えるよう設けるべき三つのルール。
「一つ、俺を目立たない役に配置すること。裏方が好ましいが……。
二つ、俺がここでお前らとショーをやることは必要以上に喋らないこと。聞かれたら答えてもいい。
そして三つ目」
俺は一息ついた。正直ここまでなら受け入れてもらえる自信がある。今時世間の目を気にする奴なんていくらでもいるからな。
覚悟を決めた。
「俺に歌わせるな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ありに(プロフ) - 5年ぶりに夢小説を漁ってたらとんでもない神作品に出会ってしまった…応援してます☺️ (2023年3月10日 19時) (
レス) id: 1064f8688a (このIDを非表示/違反報告)
ただのせかおた - 最初の注意事項とか舞台挨拶（？）みたいな感じで書いてるのめっちゃ素敵です！！お体には気をつけてこれからも頑張ってください💍応援してます！！ (2023年1月21日 23時) (レス) id: 5310fc155c (このIDを非表示/違反報告)
kubota6(プロフ) - この作品めちゃ好きです！応援してます！ (2023年1月10日 23時) (レス) @page17 id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
