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ゆっくりと、しかし確実に、カイトは言った。二人して何を言っているのかわからなくって、間抜けな声が出た。


「はぁ?」
「っと、ごめん。また呼ばれているみたいだ。ミク、行くよ」
「はーいっ! Aちゃんまったね〜!」
「お、おう」

息をつく暇もなく去っていった二人を見送り、改めて随分とトンデモない奴らだと思う。


「ま二人とも大人気ボーカロイドだし引っ張りだこなのは当然か」


時々話の途中で「呼ばれている」とカーテンの向こう側へと行ってしまうことがある。もう慣れっこだ。

カーテンの向こう。二人はすいすい出入りしているのに、俺が開けようとするとびくともしない。そのうち開けること自体諦めてしまった。

一人になってすることもなく、二人への近況報告も済んだことだし。スマホを取り出し流しっぱなしにしていた音声ファイルを止めると、三角形が俺の視界に溢れ、


「テレポート完了、っと。相変わらずイミフなシステムだぜ」


自室に戻された。やることがないので自室のベッドに寝そべり目を閉じる。

初めてスマホを手にしたのは中学校に上がったばかりの頃。通学距離が伸びた為親に持たされた。そこに我が物顔で初めから内蔵されていた音楽ファイル、《untitled》。それは、幼かった俺の好奇心をくすぐりには十分すぎる材料だった。





『う……いや、あ? あ、あん、あんたいとるど。Unで否定、タイトル、dで過去形だから……タイトルが付けられていない。変な名前』


『うわっ、まぶし……っ!?』


『何ここ……暗くて、よく見えない……』


『……ミク? ミクって、まさかあの、初音ミク……? でもそれにしては見た目が……それにちょっと透けてる……?』


『セカイ? 本当の想い? 待って、理解が追いつかない。私が、本当の想いを“忘れようとしている”?』


『ねぇ、貴方、本当になんなの……っ!? あっ、ちょっと!!』





ころん、と寝返りを打つ。思い返してみれば全く雑な対応だった。碌な説明も無いまま現実世界へと送り返されてしまったのだから。

あの日、心なしか透けていたミクは俺に「本当の想いを忘れないでいて」と訴えた。

その他にも色々、ワンダーランドがどうの、ショーがどうの、もう一人がどうの、などと言っていた気がする。あまり思い出せない。


「想い……ねぇ。あの時の俺、何を忘れようとしてたんだろ」


残念ながらそこすらも記憶に残っていない。……誰が鳥頭だ。

下から母が夕飯だと俺を呼んだ。勢いをつけベッドから立ち上がり、自室の部屋を出た。

__第四幕__→←__



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ありに(プロフ) - 5年ぶりに夢小説を漁ってたらとんでもない神作品に出会ってしまった…応援してます☺️ (2023年3月10日 19時) (レス) id: 1064f8688a (このIDを非表示/違反報告)
ただのせかおた - 最初の注意事項とか舞台挨拶(?)みたいな感じで書いてるのめっちゃ素敵です!!お体には気をつけてこれからも頑張ってください💍応援してます!! (2023年1月21日 23時) (レス) id: 5310fc155c (このIDを非表示/違反報告)
kubota6(プロフ) - この作品めちゃ好きです!応援してます! (2023年1月10日 23時) (レス) @page17 id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:詩声 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年1月6日 9時

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