恋と飾って(∞) (ページ12)

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目の前のゴール(黒) ページ12

体育館に響くボールの音とバッシュが床と擦れる音。

私は昔からこの音が大好きだった。

「今日はここまでにしよか」

挨拶をして、汗だくのみんなのゼッケンを集めて体育館の外にある洗濯機で洗う。

その間に活動報告と明日のメニューを考える、これがマネージャーの私の仕事。

今日もいつも通りゼッケンを洗濯しようとしたら

「すまん、これも洗っといてくれへん？」

『了解、、あ、横山！』

「ん？」

『いや、やっぱ何でもない』

「なんやねんそれ」

ぶつぶつ文句言いながら部室に戻っていったのがバスケ部のキャプテンの横山。

横山は私の憧れで好きな人。

バスケは上手いし、誰にでも優しいし、照れ屋で不器用だけど自分の気持ちを素直に伝えてくれる。

しかもイケメンだ。

私は別に可愛くもないし、優しくもない。

それでいて自分の気持ちは素直に伝えられない。

今日だってそうだ。

お疲れ様の一言さえ言えないくらい、横山には何も素直に言えない。

ピピーッて洗濯が終わりを知らせた。

何枚もあるゼッケンを干し終わると、今度は活動報告を提出しに行く。

『失礼しまーす』

先生「前田、お疲れさん」

『お疲れ様です、これ今日の分です』

先生「おう、相変わらず丁寧だな」

『これくらいしかやる事ないもん』

先生「選手、戻らないのか」

『もう戻りません』

先生「、、、そっか。お疲れ、気をつけて帰れよ」

『失礼しました、、』

職員室を出るとそこには横山がいた。

「よお」

『待ってたの？』

「おん、腹減ったからはよ帰ろや」

『待ってへんでよかったのに』

「待ってやっとったのにそんな事言わんでええやろ」

『別に頼んでへんし！』

いつもこうだ。どうしたって横山には素直になれない。

無言の帰り道は別に気まずいわけじゃない。

「、、何泣いてるん」

『泣いてへんし』

「、、、あっそ」

横山には全部お見通しらしい。