SPF5 ページ6
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「うん、全部ある。…どう?ゴヌクくん、買い出しは覚えた?」
母が買い物袋の中身を確認して言った。
「はい!…あ、でも道がまだちょっと不安で。できればもう少しAちゃんに教えてもらいたいような…」
キッと彼を睨む。
道なんて行き道だけですっかり覚えてしまって、帰り道は私よりも先を歩いていたのに、何を言うんだこの男は。
しかし母はパクゴヌクをえらく気に入ってしまったようだ。
「そうよね、まだ不安よね!A、ゴヌクくんに良くしてあげるのよ」
「……」
パクゴヌクは真面目な好青年だった。
毎日バイトにやってきて、1週間も経たないうちにほぼ全ての仕事を覚えきった。ドリンカーの仕事にすぐ慣れたし、加えてお酒が入ったお客さんの相手もうまかった。
「お、新入りくんかい?もしかして、Aちゃんのカレシ?」
「はは、そんなんじゃないっすよ。立候補はしてるんですけどね。…なんちゃって」
…たまにふざけたことを言うけれど。
彼と顔を合わせるようになって2週間が経つ頃。
「お疲れさま!今日も遅くまで悪いわね」
私も一日中立ちっぱなしで手伝っていたのに、母の労いの言葉はパクゴヌクだけに向かって投げられた。
これで好きなアイスでも買ってちょうだい、って500円玉を渡されたパクゴヌクは、当たり前みたいにコンビニまで私の右腕を引いた。
骨ばった大きい手のひらは確実に男の子のものなのに、私の腕を掴む力は優しくて、壊れ物を扱うみたいな触れ方に戸惑う。
「Aちゃん、これとか好き?」
さっきまで私の腕に触れていたその手が、今度はふたりで割って食べるタイプのアイスを掴んでいた。
家までの道をアイスを食べながら歩いた。
夏の夜は蒸していて、太陽はすっかり隠れているのにじっとりと暑い。
懐かしいコーヒー味が口内を冷やした。
なんだか久しぶりに食べた気がする。
「Aちゃん」
「…なに」
「今も、キムテレが好き?」
あたかも私がテレを好きだったみたいな言い方。
…実際それは本当なのだけど。
「なにそれ…」
「俺くらいAちゃんのこと見てれば分かるよ。1年のとき、キムテレが好きだったでしょ」
夏の夜とは不思議なもので、素直じゃない私に本当のことを吐かせた。
「……今は違うよ。テレは、いい友達」
彼の言うとおり、高校に入学してすぐテレを好きになった。しかし、彼をよく知って、1年生が終わる頃には「なんか違うのかも」と思うようになった。
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ゆづき(プロフ) - メロメロドスコイマンさん» ああぁ実はすごく大好きで何度も作品読ませていただいてました、、!😳他でもないメロメロドスコイマンさんにコメントまでいただけて嬉し恥ずかしという感じでどうしていいかわかりません( ; ; )笑 ありがとうございます、大好きです💝 (4月8日 21時) (レス) id: bfb37b3d55 (このIDを非表示/違反報告)
メロメロドスコイマン(プロフ) - コメント失礼致します。本当に天才すぎて何度も何度も味わって読み返してます。ゆづきさんの書く作品全てが素敵で、こんな宝物みたいな日々を送ってみたかったな〜〜といつも思います。お体に気をつけてこれからも活動してください🫶 (3月27日 2時) (レス) id: 1a4bf9bdf9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - のあさん» ぎゃーー、嬉しすぎます❤️🔥☺️💘ゴヌクってどうしてこんなに沼なんでしょう、、?怖いですよね、、👉🏻👈🏻 (9月27日 20時) (レス) id: bfb37b3d55 (このIDを非表示/違反報告)
のあ - ジュンヒョンのネタ使うのは天才です✨それにゴヌクがほんと…沼! (8月16日 16時) (レス) @page17 id: 034e6a45ed (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - はなぴーさん» なああんて嬉しいお言葉😭ありがとうございます、、!嬉しすぎます〜✨️ (7月12日 11時) (レス) id: bfb37b3d55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆづき | 作成日時:2023年6月6日 17時