SPF11 ページ12
11
「……ママが…パパが……いなくなっちゃったの…」
「そうなの？じゃあ探さないといけないね。お名前聞いてもいい？」
「………」
両の目にいっぱいの涙を浮かべて、少年は首を横に振る。
名前は言いたくない、か。
「よおし！じゃあお姉さんとなにか食べよう！わたあめ好き？」
今にも涙が零れそうなのに、その質問には
「うん…」
と答えた。微笑ましくて、笑顔になる。
目の前にあったわたあめの屋台に並んで、迷子の少年が指を指した戦隊モノの絵柄のわたあめを購入する。
手渡すと、キラキラした目で嬉しそうにわたあめを見つめるのがなんともかわいらしい。
わたあめを食べているうちに私への警戒心がなくなったのか、
「ぼく、うぬって言うの」
と教えてくれ、年齢は指を5本立てて
「ごさい」
と言った。
クムジュンヒョンがよく教室で見せる芸だったので、つい吹き出してしまった。少年は、目をぱちくりさせている。
「5歳の、ウヌくんね。ぜんぶ自分で言えて、偉いね」
頭を撫でてそう言うと、
「うん、ウヌ、もうすぐおにいちゃんになるから、えらいよ」
「そうなの！かっこいいお兄ちゃんだね」
ウヌくんは、迷子のアナウンスをかける運営のテントまで歩く道すがらで色々なことを教えてくれた。
もうすぐ妹が生まれること、今日はパパにりんご飴を買ってもらう約束をしたこと。そして、ママに、おねえちゃんが買ってくれたわたあめを自慢するんだ、と言ってくれた。
既にウヌくんのご両親がウヌくんを探してテントに来ていたようで、テントに到着してすぐに、ウヌくんを待たせることなくご両親に引き渡すことができた。
ウヌくんが宣言通りお母さんにわたあめを見せると、ウヌくんのお母さんは顔を青くして、何から何まですみません、と頭を下げた。
わたあめの分のお金を払おうとしてくれたのを断ると、せめてこれだけでも、と手をつけていない焼きそばが2パック入ったビニール袋を渡してくれた。
わたあめよりも結局焼きそばの方が高くついたのではないかと少し申し訳なくなりながらも、ご厚意を受け取って自らの屋台まで戻る。
なんだかいいことをした気がして、気持ちがいい。
この焼きそばは…そうだ、ゴヌクにあげよう。
きっとお腹を空かせてるはずだ。花火を見ながら一緒に食べよう。
屋台に帰ってくると、パクゴヌクは優しい顔つきで、
「迷子ちゃん、帰せた？」
と聞いてきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 262人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆづき(プロフ) - メロメロドスコイマンさん» ああぁ実はすごく大好きで何度も作品読ませていただいてました、、！😳他でもないメロメロドスコイマンさんにコメントまでいただけて嬉し恥ずかしという感じでどうしていいかわかりません( ; ; )笑 ありがとうございます、大好きです💝 (4月8日 21時) (
レス) id: bfb37b3d55 (このIDを非表示/違反報告)
メロメロドスコイマン(プロフ) - コメント失礼致します。本当に天才すぎて何度も何度も味わって読み返してます。ゆづきさんの書く作品全てが素敵で、こんな宝物みたいな日々を送ってみたかったな〜〜といつも思います。お体に気をつけてこれからも活動してください🫶 (3月27日 2時) (レス) id: 1a4bf9bdf9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - のあさん» ぎゃーー、嬉しすぎます❤️🔥☺️💘ゴヌクってどうしてこんなに沼なんでしょう、、？怖いですよね、、👉🏻👈🏻 (9月27日 20時) (レス) id: bfb37b3d55 (このIDを非表示/違反報告)
のあ - ジュンヒョンのネタ使うのは天才です✨それにゴヌクがほんと…沼！ (8月16日 16時) (レス) @page17 id: 034e6a45ed (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - はなぴーさん» なああんて嬉しいお言葉😭ありがとうございます、、！嬉しすぎます〜✨️ (7月12日 11時) (レス) id: bfb37b3d55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆづき | 作成日時：2023年6月6日 17時
