【d!】忠誠心故に【軍パロ】 (ページ32)

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積まれに積まれた荷物を見上げる。
目の前の荷物は物資調達部隊が仕入れてきたもので、今日はこの荷物たちの運搬だとメイド長に伝えられた。

「相変わらずとんでもない量だねぇ……」
「それほど調査部隊が頑張っているってことよ。ほら、貴方たちも運びなさい」
「う～、やだなぁ」

嫌々箱を持ち上げるマーレや他のメイド達を横目に、食料が入ったおおきな麻袋を抱える。
思ったよりも重い。いや、ダジャレとかじゃなくて。本当に重い。
アトロントでは書類仕事ばかりだったからそう感じるだけかもしれないが、すこしだけ息苦しさを感じるほどの重さだ。
これを何往復も運ぶのか、と絶望していると、突然、腕にかかる重圧がずどん、と大きくなった。メイド長が上から同じような麻袋を落とすように置いたのだ。そのうえ、メイド長は早く持って行けと顎で指図してくる。これも仕事だ、といらだちを抑え、震える足で歩き出した。

ゆっくりではあるが、一歩一歩踏み出していく。
事前に食堂に運ぶよう伝えられているため、他のメイドたちも同じように荷物を持って食堂へ向かっている。相違点をあげるとするならば、私の足が明らかに遅いことだろう。
というより、私からすればこんなに重い荷物を持ってすたすた歩けるほうがおかしい。本当に身体の構造一緒なのかと問いたくなる。
ああもう、なんでこんな重労働をしなきゃいけないの。どう考えたってメイドの仕事じゃないでしょ。兵士とかに頼めばよくないかな。しかも荷物のせいで前見えにくいし。
一度心の中で悪態をついてしまえば、芋づるのように次々と出てくる文句。食堂はいまだ見えてこない。
じわじわと体力が消費され、気を抜いてしまえば腕の力がなくなって荷物を落としてしまいそうだ。
……もう落として逃げようかな。

「っあぶない！」

突如、廊下に響き渡る大声。声のほうへ振り向こうとするも、突然左肩に走った鈍痛に、その場に倒れこむしかなかった。持っていたはずの荷物は、落とした衝撃で中の食料がこぼれ出ている。
地べたに転がる食べ物を拾わなければ、と、からだを起こそうとするが、動くたびに左肩にびりびりと電撃のような痛みが走る。
重い荷物を持っていたときとは比べ物にならないほどの息苦しさ。目の前が、ちかちかと点滅する。

「おいっ、大丈夫か！？」

じわじわと落ちていく瞼に、死を悟った時、狭い視界の中で最後に見えたのは、黄色だった。