【d!】忠誠心故に【軍パロ】 (ページ31)

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「……どうかされましたか？」

エーミールさんの声に顔を上げると、彼は心配そうに眉尻を下げていた。

「いえ、幹部の方にご迷惑をおかけしてしまって申し訳ないな、と……」

今考えていたことを言えるはずもなく、心の片隅に抱えていた罪悪感をエーミールさんに伝えると、エーミールさんはにこやかに、誤る必要はありませんよ、と言ってくれた。

「そういえば、お名前を聞いていませんでしたね」
「Aです」
「Aさんですか。良い名前ですね」

〔Aか、いい名前だね〕

ふと、閣下の言葉を思い出す。
エーミールさんに話しやすさを感じていたのは、すこしだけ閣下に似ていたからかもしれない。エーミールさんの紳士的な振る舞いや優しい声色が、閣下を彷彿とさせる。
やっぱり彼は、アトロントのほうが合っているだろう。

「ここがAさんの寝室だと思いますよ」

エーミールさんとのお話に夢中になっていると、見慣れた扉の前についていた。

「あ、ここです、ありがとうございます」

感謝の言葉とともに頭を下げると、お安い御用ですよ、とエーミールさんは笑った。
それでは、とエーミールさんは来た道を戻っていく。その様子を、見えなくなるまで見送っていた。

「またあえたらいいな」