【d!】忠誠心故に【軍パロ】 (ページ29)

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「Aちゃん、後はやっとくから、休んでいいよ」
「はい、ありがとうございます」

我々国にスパイとして潜入してから一週間。仕事に慣れてきた私は、マーレと別々で仕事することが多くなっていた。知らない人ばかリで最初こそ緊張したが、みんな優しく接してくれるので、支障なく仕事で来ている。
この一週間、大きな問題も起こってないし、幹部とも接していない。本来ならば、幹部と話すなんて階級が高い人でないとできないのだ。初日がおかしすぎただけで。

「あ、新人の子」

寮室に戻ると、初めて見るメイドに声をかけられた。自身のベッドに座る黒髪のボブディのメイドは、どこか見下したような目で見てくる。

「あれ、初めましてか。まぁいいわ。どうせ関わることないでしょうし」

彼女は長いまつげを伏せ、艶のある黒髪を手で払う。
以前同室の先輩メイドに、もう一人のメイドは男の部屋に入り浸っていると聞いた。確かに、彼女からあふれる色気は結構なものだ。
不純異性交遊がダメとは言わないが、不特定多数とそういう関係を持つのはいけ好かない。個人の主観だけど。

「なに、いつもどこにいるかって？そうね、三日前から鬱様のところにいたのよ」

彼女はどうやら私が興味を持ったと思っているようで、自慢げに昨日の夜について話しだす。
そういえば、鬱先生は浮気性でよくメイドに手を出してる、とトントンが言っていたような。彼女もその一人らしい。浮気性の人なんて私は絶対に無理だけど。

聞きたくもない彼女と鬱先生の夜の話に嫌気がさし、用事があると嘘をついて寮室を後にする。休もうと思っていたのに、予定が狂ってしまった。
何するか決めないまま寮室を出てしまったし、どうしようかな。

「……そうだ、館の中探索しよう」

地図を見ても把握しきれないこの館を理解するいい機会かもしれない。明確に覚えてるのは寮室と食堂くらいだし、これからお世話になるんだから、覚えておいて損はない。
くすぐられた冒険心でわくわくして、なんだか足取りが軽いようなきがした。