【d!】忠誠心故に【軍パロ】 (ページ22)

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「あ、えっと」

急に迫ってきた端正な顔に驚いて声を上げるが、目の前の男は気にもとめず、気だるげな瞳で覗いてくる。不意に香るタバコの匂いが、彼の妖艶さを更に醸し出していた。

「……ええ顔するやん」

ショッピはふっと笑って、目を細めた。その表情に、えも言われぬ恐怖が腹の底から這い上がってくる。妖しく艶めく紫に、目が逸らせない。

「ショッピ様！私どもは仕事がありまして……」

息もできないほどの威圧感で今にも押しつぶされそうな私に、マーレは助け舟を出してくれる。マーレの声に、張り詰めた緊張感がふっととける。

「……ま、そりゃ残念すわ」

マーレを一瞥して、ショッピは顎を掴んでいた手を離し、自身の紫ジャケットのポケットへ、無造作に突っ込んだ。場を支配していた威圧感は、元からなかったかのように消えていた。

「ほんなら、また今度にでも」

ショッピは気だるげな様子でそう言うと、何事も無かったとでもいうように、仏頂面で用具質を出ていく。細めた紫の瞳で、私を見ながら。

「A、大丈夫？！」
「ああ、うん、大丈夫」

何をされていたのか分からず、呆けているのをマーレの声で引き戻された。大丈夫、なんて口では言ったものの、実際はなにも大丈夫じゃない。指先の震えが止まる気配は無い。
心配そうに覗き込んでくるマーレに、何とか笑顔を保つ。

「色々あったし、夕食まで部屋で休むといいよ。初日だし、今日の仕事はここまでにしておこうか」
「うん、ありがとう」

いろいろと思うことはあったが、ひとつ難が去ったのだ。今はマーレのお言葉に甘えて、自分の寮部屋へ向かおう。